研究課題/領域番号 |
15K02130
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
須藤 弘敏 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70124592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地方仏 / 北東北 |
研究実績の概要 |
29年度はあらためて北東北の近世民間仏に関する再検討を行った。具体的には申請者自身が長年行ってきた北東北各地の仏像調査資料(調書、手記、写真)の全点検と、その中からの課題再精選が第一段階。次にそこで見出した再調査が必要な仏像を弘前市、青森市、蓬田村、七戸町、平川市などで調査した。中では平川市尾崎萬松寺の民間仏調査、七戸町青岩寺の右衛門四良仏多数の詳細な調査は地方民間仏の主要な性格や魅力を再認識する機会として大きな意義があった。 その一方、全国各地の地方仏との対照作業も続けており、29年度は奈良国立博物館の快慶展において近世仏を研究する上での基盤となる造形感覚をきちんと学び得たことは有益だった。さらに福岡県糸島市、長崎市、島根県出雲市、東京都町田市などで調査や見学を行った。その中で町田市長津田薬師堂の日光月光菩薩像は、平安時代の地方仏が近世の同地域の像に強い影響を与えた作例であることを見出したのは重要な成果である。 また、寛文年間に北日本を行脚した円空が残した仏像がこの地の後の仏像に影響を与えたか否かについて、その明徴となる仏像を幾体も見出したことは注目すべき発見だと考える。 あわせて昭和30年代から40年代にかけて青森県内で行われた民間仏に関する展覧会やその記録資料等の発掘につとめ、故笠原幸雄氏が撮影された写真300点のデジタル化とその分析を進め、申請者自身の調査記録との照合検討で大きな収穫があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世の地方仏に関する情報の収集分析とそれを元にした実地調査、一地域に偏しない対照的な研究を課題としていたが、おおむね所期の計画通りに進んだ。青森県下についてはほぼ全体を網羅するデータベースを確立し、その中での全体の傾向や個々の特徴について十分な理解が得られた。 また、くり返してきた他地域の仏像を見る作業から、中央と地方、中央と周縁などいくつかの大きな視座が得られてきた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度を迎えるが、重要な仏像の調査はさらに続ける一方、「地方仏」や「民間仏」を美術史の基本的な課題としてどう位置づけるかに関して、総論的な著作の完成を期している。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金の対象となる作業が一部早く終了したため、およそ2人日分の余剰が生じたが、次年度の作業に振り向ける。
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