1.海外作品調査とその成果について:パルマにおける作品調査により、コレッジョ「カメラ・ディ・サン・パオロ」及びアレッサンドロ・アラルディ「グロテスクの間」に関する記憶術的イメージの分析を完了し、以下の結論が得られた。これらの2つの絵画的装飾では、旧約及び新約聖書に基づくイメージ系列と、古代神話及び記憶術ないしヒエログリフに基づくイメージ系列が、世界の構造に関する魔術的思考(月に関する魔術的信仰及びディアナ神話における民間信仰・民間医療的思考、グロテスクによって表象された古代神学的思考)によって結合・接続されている。 2.海外資料調査とその成果について:昨年度から予定したドレスデンなどでの調査では本来の研究目的が達せられないため、ローマでの資料調査を実施した。特に、ルネサンスにおける魔術的思考に関する一次文献を分析・収集した。 3.研究成果:以下の著作の監修及び執筆を行い、上記1及び2の成果を発表した。足達薫監修、遠山公一、喜多村明里、足達薫、出佳奈子、金山弘昌、伊藤博明著、『イタリア美術叢書II 光彩のアルストピア レオナルド・ダ・ヴィンチからミケランジェロへ』ありな書房、2019年2月1日。執筆箇所、pp. 99-147(第3章 女子修道院のなかのルネサンス――サン・パオロ修道院と古代神学的思考」)、pp. 259-264(「エピローグ アルストピアの第二フェーズ――盛期ルネサンスの「時代の目」)。また、英語論文を準備しており、早急に投稿する予定である。 4.今後の研究への発展:ルネサンスの美術及びイメージ文化における記憶術を中心とする魔術的思考と美術の構造的同調性をさらに実証的に発展させるべく、視点を共有するさらに2人の研究者とともに「挑戦的研究(開拓)」のためのグループを形成した。調査・成果発表・WEBでの研究ネットワーク及びデータベース構築を目標にして研究を開始している。
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