研究課題/領域番号 |
15K02133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 篤 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10212226)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マネ / 政治と美術 / 検閲 |
研究実績の概要 |
平成27年度は政治主題関連作品に関する調査旅行、作品と資料の分析を行った。 第1回目の調査旅行は10月に行い、まずロンドンのナショナル・ギャラリーで《皇帝マクシミリアンの処刑》(第2作)と《テュイルリーの音楽会》を実地調査し、作品に関するデータや関連資料を収集した。次いで、パリのフランス国立図書館で当時の新聞雑誌における皇帝マクシミリアンの処刑に関する記事とマネが受けた検閲の調査を行い、フランス国立美術史研究所で、第2帝政、第3共和制初期の政治と美術行政制度に関する補足調査を行った。 収集した資料を日本で整理し、《皇帝マクシミリアンの処刑》と《テュイルリーの音楽会》について分析した。《皇帝マクシミリアンの処刑》は、マネも含めた第2帝政期の共和主義者たちにおける反ナポレオン3世の政治的立場を示唆した作品であり、そのニュアンスを感じ取った内務省から圧力がかかり、マネの生前にフランス国内で展示することができなかった。それに対して、マネは同主題のリトグラフを制作し、発表しようとしたが、それも差し止められた。明らかに政治的な検閲を受けたのである。また、初期の《テュイルリーの音楽会》にも構図、人物、モチーフ、様式などを総合的に判断すると、既に体制批判の微妙な暗示を読み取ることが可能であり、検閲をかいくぐるマネの戦略的態度が想定される。なお、《国旗のあるモニエ街》やロシュフォール関連作品など第3共和制期の政治主題関連作品は1870~71年の普仏戦争やパリ・コミューンの傷跡をテーマ化しており、今後はそれらの作品との関連性を考察することが必要であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は第2回目のアメリカ調査旅行を平成28年1月に行い、ボストン美術館で《皇帝マクシミリアンの処刑》(第1作)、フィラデルフィア美術館で《キアサージ号とアラバマ号の戦い》を実地調査し、資料収集する予定であった。しかし、平成27年11月にパリでテロが起こったため渡米を自粛し、上記の調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に行えなかったアメリカの美術館での調査を、平成28年度のアメリカ調査旅行に含めること、また日本国内でできる調査、分析を早めに行うことによって、研究の遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年11月にパリで大規模なテロが起きたため、それ以降予定していたアメリカ調査旅行を中止し、旅費を使用することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定している調査旅行に、今年度できなかった調査を含めることで、今年度未使用の旅費を使う計画である。
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