研究課題/領域番号 |
15K02133
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 篤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10212226)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 政治と絵画 / 娼婦と絵画 / 絵画と検閲 |
研究実績の概要 |
第1回調査旅行(アムステルダム、ハンブルク、チューリッヒ、パリ:2016年6月17日~23日)では、マネの政治主題関連作品として、ハンブルク美術館で《ロシュフォールの肖像》、チューリッヒ美術館で《ロシュフォールの脱出》を実地調査し、作品に関するデータや資料を収集した。折よくハンブルク美術館で大きなマネ展が開催されており、性表現関連作品として重要な《ナナ》を含め、かなりの数のマネ作品を同時に調査できたのは幸運であった。アムステルダムのゴッホ美術館で19世紀の娼婦をテーマとした展覧会が開かれていたのも大いに役に立ち、パリのオルセー美術館で性表現関連作品として《草上の昼食》、《オランピア》を改めて調査したこととも合わせて、娼婦の表象に関する理解を深めることができた。ただし、時間の関係でフランス国立図書館、フランス国立美術史研究所で、19世紀当時の娼婦に関する資料調査を行うことは来年度に持ち越した。 性表現関連作品として、ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵の《オペラ座の仮面舞踏会》がハンブルクのマネ展で調査できたこともあり、当初予定していた第2回調査旅行(ニューヨーク、ワシントン)は行わなかった。ニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の《エスパダの衣装を着けたヴィクトリーヌ嬢》と《1866年の若い女性(女と鸚鵡)》、政治主題関連作品として、ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵の《老音楽師》の調査は来年度に持ち越した。 分析の結果、コミューン派の流刑者で恩赦されたロシュフォールをモデルにした作品を即座に制作したことは、共和主義者マネのやや過激な政治性を表していることがわかった。また、娼婦や男女遊楽の図像を描いた主要作は、当時の職業的な娼婦とそれに境を接する女性たちの生態と関連はあるものの、画家の意図は微妙であり、特異な絵画表現も含めて今後のさらなる調査研究が必要と思われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マネの政治主題関連作品については、平成27年度、28年度の調査で研究がかなり進捗し、性表現関連作品についても平成28年度の調査で一定の進展をみた。ただし、ヨーロッパでの作品調査は行うことができたが、日程の関係で資料調査が不十分になっており、予定していたアメリカでの調査が様々な理由から行えなかったので、その分作品調査に遅れが出てしまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度に予定しているパリ調査旅行のときに絵画と検閲に関連する資料調査日を増やし、その後のアメリカ調査旅行のときに、平成28年度に調査できなかったマネ作品を加えることによって、遅れを取り戻し、研究を推進していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
パリ調査旅行で作品調査はできたが、資料調査に充てる時間的余裕がなかったこと、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵作品がハンブルク美術館のマネ展で調査でき、かつ秋の海外出張(パリ第10大学での博論審査)の後に体調を崩したこともあって、アメリカへの調査旅行が行えなかったことが理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定しているパリ調査旅行のときに絵画と検閲に関連する資料調査日を増ややし、さらにアメリカ調査旅行のときにも28年度に調査できなかったマネ作品を加えることによって調査日を増やして研究の遅れを取り戻すつもりなので、その旅費に充てたい。
|