本研究は、18世紀ゴブラン製作所のタピスリーの名声を高める上で貢献したフランソワ・ブーシェの下絵制作活動について、包括的に論じるものである。ブーシェは1755年にゴブラン製作所の総検査官として迎えられ、壁掛けをはじめ椅子の上張りとして用いるタピスリーの下絵を提供した。調査・研究によって、ポンパドゥール夫人のためにゴブランで織られたブーシェの下絵に基づく連作やタピスリーを用いた家具に関する新知見を得ることができた。また、18世紀ゴブラン製作所とボーヴェ製作所のタピスリーの比較考察などを通じて、両製作所の作品にみられる図像表現や様式的特徴について明らかにした。一連の成果は国内外で発表・公刊された。
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