研究課題/領域番号 |
15K02136
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金井 直 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (10456494)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新古典主義彫刻 / 彫刻の保存 / 彫刻の表面性 |
研究実績の概要 |
1.【カノーヴァ調査】アントニオ・カノーヴァ作品の現状調査をロンドン、ヴィクトリア&アルバートミュージアムおよびチャッツワース、デヴォンシャー・コレクションで実施。前者においてはカノーヴァの最重要初期作品である《テセウスとミノタウロス》と後期の代表作《三美神》、後者では最晩年の作《眠るエンデュミオン》を、とくに表面の仕上げに関して精査した。改めて確認されたのは、オリジナル表面の不在ないし見極め難さである。このこと自体、カノーヴァ作品の受容史を検討する上で、重要な事実となる。 2.【カノーヴァ以外の調査】上述の2館に加え、シドニーNSW美術館において、イギリスの新古典主義彫刻を精査。カノーヴァ後の大理石彫刻の表面に関する情報の収集(写真撮影)をおこなった。また、ヴェネツィア、リヨン、シドニー等の国際展において、現代彫刻の調査を実施。表面およびテクスチャーを作品の構造として呈示する事例を収集した。こうした観点からの総合的分析は、独自のものである。 3.【文献調査】エルギン・マーブルズに関する史料調査を彫刻表面の記述とう観点から進めた。アルテ・ポーヴェラの表面性に関する言説の調査分析をすすめた。 4.【成果公開】彫刻の表面性に関する論考を公表した。「写真と超克あるいは互恵性」青山勝編『自然の鉛筆』赤々舎、2016年。「白川昌生『消された記憶』に寄せて」『REAR』No.36、2016。前者においては彫刻受容の表面性を、後者においては近代彫刻の本質的表面性を論じた。彫刻を構成する多様な表面性を抽出する方法は、本研究独自のものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カノーヴァの重要作品の調査を実施し、当該館の学芸員との情報交換態勢も整ったことで、研究のコアが形成できた。また、多くの国際展を訪れ、集中的に現代美術作品を調査することによって、本研究の拡張可能性も確認できた。一方、日本の近代彫刻に関する調査、イタリアのおけるカノーヴァ後の彫刻家に関する調査は、ほぼ未着手となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以後、イタリアおよび日本国内における文献調査を徹底し、研究の実証性を高める。 また、現代作家への聞き取りを開始し、その知見を研究本体にフィードバックさせていく。
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