【カノーヴァ関連作品調査】ヴェネツィアおよびバッサーノ・デル・グラッパにおいて、ジュゼッペ・デ・ファブリス等、カノーヴァの弟子・追随者の作品調査を実施。様式・技法的細部について分析を進めるとともに、関連文献を収集調査した。結果として、カノーヴァ派の彫刻家たちにおいてすでに、作品表面への意識・関心が減退していることが窺われた。この脱カノーヴァ傾向の特定は、新古典主義彫刻の受容史を研究分析するうえで、重要な知見といえる。 【カノーヴァ以外の作品調査】ロンドンおよびシンガポールにおいて、公共彫刻(モニュメント)の設置について調査を実施。ナショナリズムの先駆的事例(トラファルガー広場、ロンドン)と、後年のその展開(ラッフルズ像、シンガポール)を、とくに台座の機能に留意しつつ比較分析することで、近代彫刻およびモニュメントの「表面性」を研究した。現代彫刻に関しては、あいちトリエンナーレのキュレーションに参加することで、彫刻とジャンル(野村在)、彫刻と身体(二藤建人)、彫刻と社会(白川昌生)、彫刻と不朽性・言語(ジョヴァンニ・アンセルモ)をテーマに展示を実現。あわせて実作に即しつつ、個々の表面性について、検証をおこなった。 【成果公開】現代彫刻の表面性、脱モニュメント性を考察する契機として、展覧会「白川昌生・小田原のどか 彫刻の問題」を企画し、同題の関連出版物に「代わりとしてのモニュメント、モニュメントの代わり」を寄稿。また、シンポジウム「彫刻とエロス 目と手で育むユニバーサル・ミュージアムの未来」(東海大学、2016年12月3日)において、彫刻の表面性をめぐる報告をおこなった。
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