研究課題
基盤研究(C)
院政期から鎌倉時代にかけての宮廷の絵画を、政治体制の変動に連動させながら理解する新たなモデルの構築を行った。従来鎌倉時代絵画史は、個別作品研究は盛んであるものの、必ずしも通史的な展開に対する基準的な観点は存在していなかった。本研究では、筆者が主たる研究対象とする似絵の史的展開を軸に、この時期の絵画作品を広く取り込みつつ、さらには文芸作品などの動向にも目配りして、鎌倉時代絵画の歴史を系統的に理解するための基盤を構築した。
美術史
院政期から鎌倉時代にかけては院政が主なる政治体制であった。過去には、院政は、院の専制性が強調されたが、近年では、院・天皇・摂関の共同執政であるという見解が強まっている。しかし、美術史研究においては、院の専制的な性格が絢爛豪華な美術品を生み出す原動力であるとする説明が行われている。本研究では、日本史研究の新しい成果を取り入れつつ、時々刻々と変化する流動的な政治体制と美術品の成立の関係を連動させることで、旧来の鎌倉時代絵画史のイメージを改めた。