1700年前後のイタリアを代表する詩人で劇作家のアルカディア・アカデミー会員ピエル・ヤコポ・マルテッロ(ボローニャ、1665― 1727年)の演劇の上演、舞台美術の問題に取り組んだ。具体的には彼の『新旧悲劇論』(1715年)などの演劇論にある上演に関する記述を分析しつつ、同時代の演劇実践との関係を考察した。とりわけ、同時代の役者で演劇理論家のルイージ・リッコボーニとマルテッロとの関係には注目し、ミラノ、アンブロジアーナ図書館に所蔵されるマルテッロ宛てリッコボーニ書簡を参照、翻刻・翻訳を済ませた。 と同時に、現在ヴァチカン絵画館に所蔵されるドナート・クレーティの八点の連作絵画の研究にも取り組んでいる。自然豊かな風景のなか望遠鏡で天体を観測する若者たちを表わしたこれらの絵は、同時代の数学者・天文学者で詩人のエウスタキオ・ マンフレディが提供した図像プログラムをもとに描かれている。詩人としてマルテッロとしばしば共同制作をおこなったマンフレディの着想の構造と機能を論じるため、マルテッロ作品『イエスの目』などの関連する文献資料を読み進めた。一方で、ボローニャ国立古文書館にて同作の初期の来歴の再構成に決定的に重要な資料を見出し、翻刻・翻訳した。この絵についての研究成果は、2017年10月に國學院大學にて開催された美学会全国大会で口頭発表された。 一方、マルテッロが公刊した版本の挿絵についての研究成果を、書誌学の専門誌『Paratesto』において公刊した。
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