研究課題/領域番号 |
15K02142
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
京谷 啓徳 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (70322063)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エステ家 / フェッラーラ派 / 宮廷美術 / 祭壇画 / ドッソ・ドッシ |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、エステ宮廷における美術活動について、テクストと図像双方の一次資料の収集と整理をおこなった。ついで15-16世紀のフェッラーラにおける祭壇画に関する調査研究として、フェッラーラ派が生み出した祭壇画における特徴的な要素の中で、継続的に採用され続けた、高い基壇に乗り、建築的に複雑な形状をした玉座の描かれた祭壇画(代表的な作例としては、コスメ・トゥーラのロヴェレッラ祭壇画とサン・ラッザーロ祭壇画、エルコレ・デ・ロベルティのポルトゥエンセ祭壇画等が挙げられる)に関して、画像および関連史料を収集することにより、その継承の実態を正確に跡付けるともに、そのことの持つ意味について考察を試みた。祭壇画の場合、その注文主は必ずしもエステ家のみとは限らないが、同家が教会や修道院と関わりを持つ事例も含まれるため、注文の経緯等に関しても、資料を精査した。16世紀のエステ家宮廷画家ドッソ・ドッシと15世紀フェッラーラ派絵画との関係に関する研究に関しては、G.フィオレンツァが先鞭をつけた課題であるが、その示唆を受けつつ、研究を発展させた。特に、ドッソ・ドッシの代表作の一つ《魔女図》(ローマ、ボルゲーゼ美術館)と昨年度に研究を行ったベルフィオーレ宮殿のムーサイ連作との類似は、そのいずれもが、制作過程において描き直しを経験しているという点からも興味深いものであり、その点から問題を展開させるように試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要に示したように、当初の研究計画に従い、おおむね順調に研究目的が達成された。エステ宮廷における美術活動において、テクストと図像双方の一次資料の収集と整理が進行した。15-16世紀のフェッラーラにおける複雑な建築的構造を有する玉座の描かれた祭壇画の系譜に関する研究に関しても当該作品群のデータ収集および分析が進んだ。16世紀のエステ家宮廷画家ドッソ・ドッシと15世紀フェッラーラ派絵画との関係に関する研究については作品調査および文献資料収集を推進した。資料調査に関しては、イタリア共和国や国内の図書館や研究機関等に所蔵されるものを中心におこなった。個々の論点について論文執筆には至っていないが、研究実績を踏まえたうえで、中央公論新社の『西洋美術の歴史』シリーズの一巻『ルネサンス1』に、フェッラーラ派に関する項を執筆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に記載した、フェッラーラ派に関する文献および画像データの収集およびそれに基づくデータ・ベースの構築、およびスキファノイア宮殿「12カ月の間」装飾壁画と板絵・写本装飾画の相互関係に関する調査研究を、ヨーロッパおよび国内の主要図書館における資料調査、およびヨーロッパの美術館や教会における作品調査によって推進する予定である。
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