エル・グレコは、当代美術が古代美術を凌駕したとみなす進歩的発展史観ではヴァザーリの歴史認識と合致する一方、古代美術の特質を当代美術に比較して「単純」であると捉えていた事実と、アペレスに対する突出した関心、古代彫刻に対する彼の具体的な関心がどのようなものだったのかを明らかにした。またビザンティン美術の特質を、「困難さ」という当代の美術理論の用語で捉え、ヴァザーリの絵画史観とは対立する独自な理念を究明した。さらに第3部序論およびG.ベッリーニ、レオナルド、ジョルジョーネ、パルミジャニーノをめぐる評釈を具体的に全て検証し、アンチ・ヴァザリアンとしてグレコ評釈の内実を具体的に明らかにした。
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