研究課題/領域番号 |
15K02145
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
小林 頼子 目白大学, 社会学部, 教授 (10337636)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 美術地理学 / 洋風画 / ペルシャ / グローバル化 / 文化変容 / データベース |
研究実績の概要 |
本年度は,申請課題『アジア各国洋風画の比較研究ー美術地理学的観点から』の第一年度にあたるが、同課題申請の際の計画の通り、ペルシャ洋風画の所蔵確認・閲覧と関連論文の検索・熟読、さらに日本洋風画データベースの作成に力を注いだ。 具体的には、この方面で過去に優れた実績を上げておられる研究者Amy Landau, Gary Schwarz, Axel Langerらの執筆した研究論文、展覧会図録中の記述を参照しながら、ペルシャ洋風画のできる限り網羅的なリストを作成し、各作品の特徴を纏め上げた。と同時に、アムステルダム国立美術館、大英図書館・大英博物館(ともにロンドン)、ジュネーヴ美術歴史博物館、リートベルク美術館(チューリッヒ)、サンクト・ペテルブルクの東洋写本研究所が所蔵するオリジナル作品の可能な限りの閲覧、資料・画像の収集に努めた。また、ペルシャ洋風画成立の社会的・経済的・政治的背景と、制作に携わった主要画家の詳細について情報を広範に収集する試みをした。ちなみに、アメリカ各地所在のペルシャ洋風画は、第二年度に調査を予定しているインド洋風画と同じ美術館・研究機関が所有している事例が多々あると予想されるため、時間と旅費の効率的な使用を考慮し、第二年度に繰り越し、インド洋風画と同時に調査を進めることとした。 また洋風画成立の背景には、グローバル化の中で変容する文化という現象があるため、経済史の観点から同課題で旺盛な研究活動を展開するGreifswald 大学(ドイツ)のMichael North教授をお招きし、東洋文庫と共催で8月に講演会を開催し、聴講に来られた専門家とともに、議論の場を持った。 さらに、勤務先の専門教員・学生の協力を得て、日本洋風画のデータ・ベース作りを開始し、一定程度の成果を得た。ただし、画像の著作権がクリアできていないため、なおWeb公開には至っていない。このデータ・ベース作成作業は来年度以降も継続実施の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第一年度の申請課題の遂行に必要な調査はほぼ順調に進んでいるが、資料収集、作品閲覧の数が比較的多かったため、収集後の整理が、一部、なお追いついていないところがある。 また、上記の概要にも記したとおり、調査の過程で、第一年度の研究課題であるペルシャ洋風画の一部が、第二年度の研究範囲に属するインド洋風画と所蔵先を同じくしている例が多いことが判明してきたため、それらを、時間的・経済的な効率化をはかる意味で、第二年度に繰り越すこととした。その結果、やり残した部分が発生することになった。 ただし、第一年度に出向いた研究機関が第二年度の課題であるインド洋風画を所蔵していた場合には、熟覧が許可される範囲内において、第二年度の課題の一部について研究を進めている。このため、上記の「ペルシャ洋風画研究課題のやり残し」は、差し引きで、さほど深刻なものではないと判断している。 また、これも概要で記したが、作成した洋風画データ・ベースが、画像著作権の関係でなお公開できていないことも、上記区分で「やや遅れている」を選択した理由のひとつである。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度に当たる平成28年度には、申請どおり、インド洋風画の所在調査・リスト作成・関連作品の閲覧・研究を進める予定である。 まずは、どの機関がいかなる関連作品を所蔵しているか、なお全体像がつかみきれていないため、先行研究を手がかりにしながら関連作品のできる限り網羅的なリスト・アップに努めたい。その上で、ロンドン(大英博物館・大英図書館)、アメリカ東海岸(モーガン・ライブラリー、メトロポリタン美術館、ハーヴァード大学大学付属サクラー美術館など)、ドイツの個人コレクションに集中的に所蔵されていると予想される作品を可能な限り閲覧するよう試み、インド洋風画の全体像の把握をするとともに、ペルシャ洋風画との様式的異同を明らかにする。また、その相違を生じさせた要因を政治的・文化的・社会的背景から解き明かす予定である。インドの、特にムガール朝の宗教政策の実態とインド洋風画の展開にも注意を払いたい。 さらに、インドには、中国文化も流入しているため、インド洋風画に見られる中国的な要素の判別と、中国文化伝播の経路も調査・研究の対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定交通費の支払いがなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の交通費補填に使用の予定。
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