研究実績の概要 |
最終の2018年度には、本科研課題の過去3年間の研究成果をとりまとめ、とりわけ以下の口頭発表と刊行物で公にした。 1.(口頭発表)「東西美術の邂逅と変容-フェルメールを起点に―」; 2.(著書掲載論考)「文化的事物のメタモルフォーシス―グローバル時代の美術の往来」;3.(著書掲載論考)「東西美術の邂逅と変容―フェルメールを起点に」(印刷中);4.(著書)『フェルメール全作品集 スタンダード・エディション』 いずれの刊行物でも、グローバル時代の美術においては、出自(オリジン)に重要性があるのではないこと、むしろ、絶え間なく往来しながら、着地点で無二の(オリジナル)美術に変容することに注目すべきだ、との視点を具体例を用いて論証した。また、2の論考が収録された著書の第1部、移ろう形象とつながる世界」に、グローバル美術研究で数々の成果を挙げておられる望月みや氏(ニューヨーク大学美術史研究所准教授、USA)の論文 "Connected Worlds--The World, the Worldly, and the Otherwordly"(The Nomadic Object、Brill, 2017に初出)、及びミヒャエル・ノルト氏(グライフスヴァルト大学教授、Germany)の "Mediating European Art Through Company Channels in Asia"(本科研で第1年度に主催した同教授の講演会録)を翻訳して掲載し、本科研の研究代表者である小林の研究課題をインターナショナルな研究のコンテクストに位置づけるべく努めた。 なお、今年度の研究では、日本美術の代表的な形式である屏風が、太平洋を渡り、メキシコで被植民者と植民者(スペイン)の文化と融合しながら原地化し、「ビオンボ」という名称を得て、独自の文化に昇華していることに特に注目した。文化の移動が、単純な影響関係に終わらず、複雑な相互的干渉を引き起こすものであることを証かす格好の例と考えたからである。
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