研究課題/領域番号 |
15K02150
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 道宣 / 霊験像 / 南北朝時代 / 観音信仰 / 瑞像 |
研究実績の概要 |
本年度は、『集神州三宝感通録』巻中の「元魏定州金観音像高王経縁三十一」「陳重雲殿并像飛入海縁三十二」「周晋州霊石寺石像縁三十三」「周宜州北山鐵磺石像縁三十四」「周襄州峴山華厳行像縁三十五」「隋蒋州興皇寺焚像移縁三十六」について、『大正新脩大蔵経』巻52の420頁~421頁を底本として、現代語訳と詳細な注釈を完成させた。付注項目は全部で74項目に及び、総文字数は11万字に達した。 特に美術作品や歴史・仏教史的背景に関わる諸史料、先行研究等に目配りしながら美術史の視点から独自の解説をおこなった項目に、主なものとして「観音金像」「高王観世音経」「三段に折れた刀」「身代わりの仏像」「轀輬車」「宮城内に奉安された経像」「仏帳」「珠珮」「葬送の飾り」「鵄吻」「影」「建築物の飛行説話と仏像」「臥石」「石仏を彫る手順」「幡蓋」「美玉のように研磨」「石趺」「玉華宮・玉華寺」「隋唐における離宮と仏寺」「行像」「五丈の木像」「聖像」「南北朝時代における盧舎那仏」「子宝祈願の霊験像」「鳥雀不践」などがある。 一年間の成果は、A4版で総頁数87頁の冊子『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究―(九)』として、3月中旬に刊行し、国内外の関係研究機関、研究者に寄送した。なお、本年度は研究協力者として、美術史学コースの東洋美術史専攻の大学院生をはじめ、修士・博士課程修了者たち計20名の協力を得た。 また、本研究課題に関連する研究成果として、「敦煌の瑞像図にみられる弥勒像について」と題した口頭発表を、韓国ソウル国立中央博物館で開催された東洋美術史学会でおこない、同題の論文を『美術史研究』第53冊(2016年3月20日刊行予定)に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、今年度は第31縁から第38縁までについて注釈をおこなう予定であったが、 第36縁までで総頁数が100頁を越える見通しとなったため、37・38縁は次年度に回すこととし、年度内に成果報告書を刊行することができた。また、当初は本年度分に加えて、これまでに成果公開してきた『集神州三宝感通録』巻上および巻中第30縁までの注釈のすべてを網羅した索引を作成し、今後の研究の効率化を図る予定であったが、これについては、デジタルデータ化の可能性の検討等を要するため、見送った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、第37縁から第44縁までについて、同様に現代語訳と詳細な注釈を付していく。当該範囲には、阿弥陀仏五十菩薩像、長安日厳寺の石影像など、美術史、仏教史上での重要事項が含まれるため、注釈とは別途にいくつかの事項については「研究ノート」という形で小論文としてまとめることを予定している。また、既刊行分に対する反響のなかで、原文の訓読も挙げてほしいとの要望があったため、新たにそれを加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた索引の作成を見送ったことで、成果報告書(『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究(九)』の総頁数が、その分だけ減り、編集費・印刷製本費が当初予算よりも安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定している第37縁・38縁は付注項目がたいへん多く、関連の研究も厖大であるため、年度末に刊行する『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究(十)』の総頁数が増加し、編集費・印刷製本費が高くなることが予想される。15年度から繰り越した使用額も含めて、その経費に充てる計画である。
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