研究課題
基盤研究(C)
対抗宗教改革後のローマでは聖堂に多数の祭壇画が描かれたが、庶民も多くこれらの作品を鑑賞しに訪れた。17世紀のローマでは室内に絵画が飾られることも普及し、絵画は庶民にとっても身近な芸術となっていたのである。本研究では17世紀初頭のローマ庶民が教会に飾られる聖画像をどのように受容したか、また画家たちはこの新しい状況にどのように対処したか、様々な角度から考察し、画家ドメニキーノの事例に見られるように、この時期のローマ絵画評価には庶民の関与を考慮することが必要不可欠であることを明らかにした。
西洋美術史
本研究の最大の成果は、17世紀ローマ美術界で、庶民も積極的に芸術として絵画を評価するようになっていたということを、具体的事例に即して検証したことにある。従来、聖堂を訪れて祭壇画を見る庶民は、単に描かれた聖画像をそのままに受け入れるだけであったと考えられていたが、本研究によって、バロック時代の庶民と芸術の関係に関する長い間検討されることもなかった固定観念に一席を都怖じることができた。