研究課題/領域番号 |
15K02165
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
松村 智郁子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (60436699)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 明治期 / 蝋管 / 蓄音機 / 新聞 / 音楽装置 / 紙腔琴 / 和製洋楽器 |
研究実績の概要 |
本研究は、明治期の地方紙から、蝋管、平円盤レコード、蓄音機に関する記事や広告の網羅的な調査を行い「地方における蓄音機の受容や衰退に至る状況」を明らかにするものである。また、同時代の芸能や音楽の情報の集大成に向け、各地域の興行や公演内容や芸能への取組み、紙腔琴など明治期の音具や和製洋楽器に関する情報収集も同時に進めた。 平成30年度は、伊勢新聞、徳島日日新聞、福岡日日新聞の3社を調査した。その結果、蓄音機関連の掲載は、97件(記事0件、広告85件、劇評1件、公演2件、にわか芝居台本1件・9回連載)。芸能・音楽関連の掲載(公演、劇評、随筆・論考、挿絵、刊行物等)は、約2345件であった。 主な掲載内容は、徳島日日新聞(明治30年5月15日付)の公演告知(蓄音機と活動大写真)と実施報告、福岡日日新聞(明治32年5月4~14日付)の蓄音機を用いた仁和賀(仁輪加)芝居の台本(『妻は鬼人 発音機(はったんき)の失敗(しくじり)』富田文治作 博多畳屋組)である。 一方、蓄音機の販売広告は、徳島日日新聞(明治30年10月1日付)石原商舗(大阪)、伊勢新聞(明治30年11月16日付)天賞堂(東京)、福岡日日新聞(明治31年9月14日付)前川教育用器械店(大阪)から始まり、明治30年代の前半から蓄音機に関する掲載が始まったことが解った。都市部の新聞にみられる蓄音機に関する記事(蓄音機の実演、慈善演芸会や傷病兵士の慰安目的の使用など)の掲載はなく、ここに国内の蓄音機使用における地域差がみられた。 また、この3社の新聞には、芸能に関する掲載が極めて少ないこともわかった。劇場数の少なさ、地理的な条件により都市部役者の巡業の困難さもその理由に加えられよう。広告に関しては、伊勢新聞には、雅楽器店、福岡日日新聞には、筑前琵琶、教則本などの販売の掲載があり、これらは他の地域にはない特徴的な部分であると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行にあたり、定期的に図書館へ通い、目標としていた新聞に関しては調査を終えることができた。現在は、補足調査および収集した関連記事や広告の整理を行い、本研究をまとめる方向に進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度までに進めた明治期に国内で発行された地方紙(岩手新聞、河北新報、北國新聞、扶桑新聞、伊勢新聞、徳島日日新聞、福岡日日新聞など)の調査で得た成果をまとめる年である。関連記事や広告を用いた研究報告書の作成に向けて作業を進めている。
|