研究課題/領域番号 |
15K02167
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
長嶌 寛幸 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10621790)
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研究分担者 |
松井 茂 情報科学芸術大学院大学, メディア表現研究科, 准教授 (80537077)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サウンドデザイン / 表象文化論 |
研究実績の概要 |
日本独自とされる映画音響を勅使河原宏監督作品『他人の顔』、「おとし穴」における録音技士、奥山重之助の作業に見いだし、それら作品の音響分析を行った。 そして、そこで発見した表現技法を導入したテスト映像作品『Picture of Hell』(韓国壇国大学との共同制作)を制作し、第21回釜山国際映画祭 Korean Cinema Today Vison 部門に正式出品することができた。『Picture of Hell』は1カット主観映像をベースとした実験的映像作品であり、研究目的と作品の方向性の両面から検討を行い、音声はロケーション・サウンド(現場録音)でのワイヤレスマイクのみを使用した。 ワイヤレスマイクの音声に対して作品の物語表現を音響面からも演出するために、物理的な「空間の残響」と登場人物の心理状態を表すための「心理的残響」をシーンごとに使い分けた。また、音響の定位についても、ダイアローグの内容によって、LR(ステレオ)で出す場合とC(センター・スピーカーからモノラル)から出す場合、そして、LCRから出す場合を細かく使い分け、音響位相の点からも登場人物の心理状態の変化をシーンごとに表現することができた。「(物理的)空間の残響」と「心理的残響」をシーンごとに使い分ける手法は『他人の顔』、「おとし穴」ですでに行われているが、インパレス・レスポンスを用いたデジタル・リバーブを使用することにより、より緻密な音響設計を行うことができた。また、『他人の顔』、「おとし穴」はモノラル作品であり、サラウンド環境での音響位相の実験は本作品独自と言える。 そして、更なる研究実験作品である『Old Love』(韓国壇国大学との共同制作)のサウンドデザインについて、監督である韓国壇国大学パク・キヨン教授と討議を重ねた。また、本研究の最終的な研究結果報告となる研究成果映像の撮影も完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検証テスト映像作品『Picture of Hell』(韓国壇国大学との共同制作)を制作し、第21回釜山国際映画祭 Korean Cinema Today Vison 部門に正式出品し、研究の途中経過ではあるが、海外に向けて研究成果を発表することができた。また、更なる研究実験作品である『Old Love』(韓国壇国大学との共同制作)についても今年度、国内外の国際映画祭への出品を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実験作品である『Old Love』(韓国壇国大学との共同制作)を完成させ、国内外に向けて広く発信する。そして『Picture of Hell』、『Old Love』で行ったサウンドデザイン手法の実験結果を精査し、最終的な研究結果報告となるテスト映像作品を完成させ、21世紀の日本映画独自のサウンドデザインとして国内外に向けて広く発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度2月に横浜において共同研究者(岐阜県在住)との研究会を予定していたが、研究者、共同研究者のスケジュール調整ができず、次年度に開催することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者との研究会に必要な交通費として使用を予定。
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