研究実験作品『Old Love』を完成させ、第22回釜山国際映画祭の「韓国映画 トゥデイ パノラマ部門」および、第68回ベルリン国際映画祭の「フォーラム部門」において正式招待上映が行われた。『Old Love』の音響設計においては、前年度に完成させた『Picture of Hell』でのワイヤレス マイクを用いた物理的な「空間の残響」と登場人物の心理状態を表すための「心理的残響」をシーンごとに使い分ける手法を取り、この手法が『Picture of Hell』のような実験的な作品だけではなく、一般的な「劇映画」作品でも応用可能であるということを確認できた。 最終的な研究検証作品『Blood Echo』においては、1960年代のオールアフレコ作品『他人の顔』、『おとし穴』(勅使河原宏監督)などに見られる映画音響表現を、現在の音響技術で再構築することで、日本映画がかつて表現し、現在でも海外で高い評価を受けている「オールアフレコを用いた日本的な映画音響」を今日的な形で提示することができた。 『Blood Echo』は2018年3月24日、東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎大視聴覚室において、一般公開の作品上映と共同研究者の松井茂、作品の監督である加藤直輝、作品の録音、サウンデザインを担当した清水裕紀子と「映画におけるオールアフレコ、そして、『声』の可能性を巡って」というテーマで公開討議を行った。今後、『Blood Echo』は国内外の国際映画祭にエントリーし、その後、Vimeoなどの動画サイトで無料公開し、本研究の成果を広く社会に発信していく予定である。
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