研究課題/領域番号 |
15K02169
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
木村 稔 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 助教 (60376902)
|
研究分担者 |
桐山 孝司 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 全方位映像 / メディア表現 |
研究実績の概要 |
本研究では、「データ」と「もの」を同時につくりあげていくデジタルファブリケーションの概念を活用して、「視点の移動」をテーマとした映像表現のために、撮影から上映体験まで一対となった身体装着型の全方位映像(360度パノラマ映像)表現装置の研究を行っている。全方位映像の撮影には複数台の超小型カメラにセンサとモータを用いたアクティブスタビライザーを組み合わせ、移動しながらでも自動制御によって安定した全方位撮影が行える装置の研究を進めている。その装置によって撮影された全方位映像はヘッドマウントディスプレイによる没入型映像体験を通して、身体と知覚の新しい経験をもたらせることを目指している。 平成27年度は、主として全方位映像表現における撮影装置の研究開発を進めた。開発にあたっては、3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーション機器を活用して、試作を繰り返しながら撮影装置を制作していった。デジタルファブリケーションの活用の利点として、図面上での計算だけで無く、即座に実物(もの)を出力、加工しながらミリ単位の調整を感覚的に修正できるところにある。既存のリグを加工して複数台のカメラを組み込む際などに、臨機応変に対応でき、自由度の高い制作を行うことが可能であった。平成28年度は、全方位映像撮影装置を用いた撮影の実践、アクティブスタビライザーや遠隔操作による移動撮影を含めた撮影装置のさらなる研究とともに、没入型ヘッドマウントディスプレイを通した360度映像体験の研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全方位映像(360度パノラマ映像)は、これまでの一般的な撮影とは異なり、ある方向に向けられたレンズの画角内だけを切り取りフレーム内に記録するのではなく、フレームという概念自体がなく、全ての方向が撮影対象となるため、撮影時に撮影者や撮影機器等が写り込んでしまう。特にカメラを移動しながら撮影を行いたい場合には、それが問題となる場合がある。そこで、平成28年度の研究では、ラジオコントロール製品やネットワーク経由からでも遠隔操作で自走可能な車輪を備えた装置などを導入し、カメラと組み合わせることで離れた場所からでも移動撮影が行える装置の研究を行った。 また、平成28年(2016年)はVR(ヴァーチャル・リアリティ)元年ともいわれ、全方位カメラや没入型ヘッドマウントディスプレイなどの全方位映像に関する機器や技術が多く発表されるとともに、それらを用いたコンテンツやサービス、体験施設などが展開されはじめた。そういった機器や施設等の調査や研究も行うとともに、関連する新しいメディア技術やディバイス等を有効に活用することによって、本研究を順調に進展させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を踏まえ、引き続き、全方位映像表現装置ならではの映像表現を目指し、 装置(もの)と映像(データ)の同時制作を行っていく予定である。全方位映像撮影装置を用いた撮影の実践、撮影装置のさらなる研究を行いながら、これまでの一般的な撮影機器では撮影できなかった方法で「視点の移動」をテーマとして物語性を持った映像を制作していく。また、一般への展示公開も視野に入れつつ、全方位映像上映環境の最適化を図るとともに、没入型ヘッドマウントディスプレイに安定した映像を送出するシステムや視聴体験の在り方を研究する。さらに、これまでの実践に基づいた新しいものづくりの研究成果をまとめた印刷物の制作を行うとともに展示の記録映像も公開し、広く一般に研究成果を周知させることに務める予定である。
|