研究課題/領域番号 |
15K02170
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
出口 丈人 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 講師 (50463956)
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研究分担者 |
桐山 孝司 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ショット分析 / 映画史 / アメリカ映画 / 日本映画 / フランス映画 |
研究実績の概要 |
本研究では、会話を描く上で映画がどのように構成されているかを定量的に理解することを目的とする。そのため本年度はまず、映画のショットの構成を分析するためのソフトウエアツールを準備した。このツールは、昨年度までに科学研究費基盤研究C「映像パタンを通して現れる映画表現の国際比較研究」で開発したツールを全面的に作り変えて実現した。以前のツールでは映像とショット分割とが一体化していて自由度がなかったため新たにショットの属性を加えることが難しかったが、今回の改良でショットに対して会話が行われているかどうかの情報を書き込むなどがしやすくなった。また分析結果をチームで共有するためにクラウドサービスを用いている。上述のツールでショットの境界や会話などの属性をデータ化したものをクラウドで共有することで、種類の違う作業を効率よく分担できるようになった。並行して時代的な広がりを持たせ普遍的な視点を持たせるために、対象を無声映画に拡大する必要があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となるショットの定量データの収集は、トーキー期に関して、すでに進んでいるが、引き続き無声映画のショットに関するデータ収集、統計分析を行った。国としては日本、米国、フランスを比較の基本としてきたが、日本映画の素材が想定以上に得られないこと、これまでの基本方針である当該年度の最大のヒット作品の記録がフランスで完備されていないことから、作品選考は難航し、後半になってようやく予定の作業にかかることができた。 また、1944年~1960年の映画に関しては、上述のツールを用いて日本、アメリカ、フランス映画を試行的に計20本分析した。無声映画は今回の計測には加えていない。 調査したショット数はちょうど合計15,000で、このうち会話の行われているショットは8,561、会話が行われていないショットは6,439である。計測したショットの平均長さは10.00秒である。そのうち会話のショットは平均12.35秒、会話でないショットは平均6.87秒である。この場合、会話とは発話していることを意味しており、笑い声や歌、ナレーション、無言のジェスチャーなどは含めていない。興味深いのは、会話のショットが始まる時刻が平均3,950秒であるのに対して、会話でないショットが平均4,488秒であるということである。この差は、映画の中で会話のショットの方が会話でないショットよりも先行して現れる傾向を示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、無声映画の分析をほぼ終わらせるとともに、時系列分析、特にウェーブレットを用いて、より詳細に会話と映画の構造との関係を調べる。 ただし、方法については、データがある程度揃ったところでの、より高次の視点からの厳密な議論が必要であり、28年度の前半はそれに時間を費やすつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
作品分析を進めるために、ソフトを購入し、分析ための人件費に使ったが、金額の端数が出てしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きソフトの購入と人件費に補填する。
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