研究課題
絵金(絵師金蔵、弘瀬洞意)は、幕末の狩野派で学んだ土佐の絵師である。祭礼を飾るという独自の様式を確立した絵金作の芝居絵屏風が開帳される高知県各地の夏祭りは、全国的にもユニークな祭りとして注目されている。しかしその一方で、芝居絵屏風は温度や湿度などが管理されていない寺社や各地区などで保管されており、損傷の激しいものが多々ある。損傷の激しい屏風は修理されることが少ない。また祭りを運営する担い手はどの地区も高齢者が多く、祭礼そのものの存続も危ぶまれている。本研究では、現存する小下図を基に当時の彩色技法を使った屏風絵として想定復元制作を行う予定であった。研究の一環で高知県内の芝居絵屏風を調査の中で、高知県香南市香我美町西川地区にある峯八王子宮の芝居絵屏風1点の調査を行った。かつて夏祭りに用いられていた芝居絵屏風は画面の約7割が欠損していた。その後、神社を管理されている氏子の意向により、高知大学で引き取ることとなり、さらなる調査で本作品は、高知県内のすべての絵金作品を把握する絵金蔵(博物館施設)でも把握していない新出の芝居絵屏風であることが判明した。そこで貴重な芝居絵屏風を後世に残すため、研究対象を峯八王子宮の芝居絵屏風に変更した。芝居絵屏風の欠損部分を補完するために、他の芝居絵屏風を目視および科学的調査を行った。研究途中での研究対象の変更ではあったが色材の特定と大下図の作成までほぼ完成させることが出来た。さらに本研究で制作した芝居絵屏風の大下図を今後活用することで、祭礼を通した地域の文化継承とさらなる活性化を促したい。また高知市内にある郡頭神社で芝居絵屏風が展示される祭礼の調査では、存続自体が検討される状況の中、群頭神社と芝居絵屏風の歴史をより知っていただくために、その内容をまとめた著書を発表した。これにより高知の貴重な文化をより大切に継承する活動の一助となることを期待している。
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高知大学教育実践研究
巻: 第32号 ページ: 69-74