研究実績の概要 |
本課題は近代バレエを扱い、特に西欧の社会的・文化的な変遷を象るものとして、その成立過程に焦点を当てたものである。分担者と連携し、一次資料に依拠した研究を進めた結果、現代的な意味での舞台芸術とは異るバレエ/ダンスのあり方が浮き彫りにされた。さらに、実践的な成果を以て分野に貢献することを視野に、文献研究から導かれるダンス(実践的な踊り方)の映像化に向け、研究基盤を調えた。 本年度中、18世紀ドイツのタウベルトによる大著“Rechtschaffener Tanzmeister” (Gottfried Taubert, 1717, Leipzig)をテーマとした国際学会において、研究・実践の両面について最新の成果を共有することができた。その結果を踏まえ、18世紀初頭のダンス様式について基本動作を捉え直し、一次文献に基づいた動画を収録、解説を施す作業に入った。 18世紀の舞踊論を巡っては、「バレエを踊る身体」がどのように捉えられているのかを探った。特に、理論家であると同時に舞踊の実践家(ダンサー、振付家)でもあったノヴェールに焦点を当て、彼がその著作の中で「踊る身体」のいかなる位相を問題にしているのかを明らかにすると同時に、その問題意識が同時代の社会的・文化的背景といかなる関係にあるのかを考察した。 19世紀前半のバレエに関しては、ガルデル兄弟の仕事に関する調査を続けてきたが、パリで調査したにもかかわらず、原資料があまり発見できなかった。そのためアイヴァ・ゲストの著作をもとに基礎的なデータを整理し、今後の研究に供するに留まった。
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