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2016 年度 実施状況報告書

昭和期日本における幻灯(スライド)文化の復興と独自の発展に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K02188
研究機関成城大学

研究代表者

鷲谷 花  成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (10727100)

研究分担者 土居 安子  一般財団法人大阪国際児童文学振興財団, その他部局等, 総括専門員 (00416257)
岡田 秀則  独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (30300693)
吉原 ゆかり  筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70249621)
アン ニ  日本映画大学, 映画学部, 特任教授 (70509140)
鳥羽 耕史  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90346586)
紙屋 牧子  独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (20571087)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード満洲 / 戦後日中文化交流 / 幻灯(スライド) / 引揚 / 炭鉱 / 労働組合 / 映画史 / 社会運動
研究実績の概要

日本炭鉱労働組合が1956年に製作した幻灯『せんぷりせんじが笑った!』の、従来不明点が多かった製作事情についての調査を行った結果、満洲映画協会(満映)に所属し、日本敗戦・「満洲国」崩壊後も中国大陸に残留し、新中国における映画事業建設に協力した後に帰国した映画技術者たちが、本作の制作を担当していたことを、遺族への聞き取り調査等を通じて明らかにした。『せんぷりせんじが笑った!』の幻灯化は、中華人民共和国~日本の国交未成立の時期の文化交流の実態の一端を伝える貴重な事例であり、調査の成果については、『映像学』第96号掲載の論文(鷲谷花「満洲から筑豊へ―幻灯『せんぷりせんじが笑った!』をめぐる「工作者」たちのゆきかい」)により詳述した。
2017年3月には、福岡市総合図書館に所蔵されている、主に占領期に作られた米国および日本製の幻灯フィルム及び説明台本の調査を行い、目録を作成した。幻灯関連資料の中には、地元教育委員会が自主製作した小学校建設や災害についての記録幻灯も含まれており、占領期から1950年代にかけての地域社会における幻灯メディアの利用についての貴重な資料といえる。
原爆の図丸木美術館「1950年幻灯上映会」(2016年4月25日)、エル・ライブラリー「炭鉱幻灯上映会」(2016年8月16日)、神戸映画資料館「中国引揚映画人特集-幻灯と映画-」(2016年9月4日)など、一般向けの上映会を複数回開催し、発見した幻灯の現物公開と貴重な資料的価値の説明を行った。神戸映画資料館で開催した「中国引揚映画人」は、木村荘十二、持永忠仁、菊地利夫、勢満雄ら、満映から新中国への残留と映画事業への参加を経て帰国した映画関係者の足跡を、戦後に関わった作品の上映により辿るもので、従来例のなかった視点による特集上映企画として、上映機会の乏しい貴重な資料を紹介する機会となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

幻灯『せんぷりせんじが笑った!』についての調査により、従来ほとんど知られてこなかった中国滞留~引揚映画人の戦後の活動の一端が明らかになり、また、新中国成立初期に作られた人形アニメーションが、戦後日本の幻灯の表現に影響を及ぼしていたことも明らかとなった。幻灯制作者の遺族との連絡を確立し、聞き取り調査により、市販の文献等には記載のないいくつかの新事実を明らかにすることができた。
福岡市総合図書館に所蔵されている幻灯(スライド)資料の精査に初めて着手し、CIEの活動に関連するものと思しき米国製の幻灯、地元教育委員会が自主製作した水害と復興作業の記録幻灯など、従来は存在を知られていなかった資料の存在を確認した。
以上のほか、全国のアーカイブの調査を通じて、貴重な幻灯関連資料を新たに発見し、占領期から1950年代にかけての幻灯メディアの実状を明らかにすることができたことは、当初の計画以上の成果ということができるだろう。

今後の研究の推進方策

福岡市総合図書館をはじめ、フィルム、スライド、説明台本等の昭和期の幻灯(スライド)関連資料を所蔵していることが新たに判明した全国の複数のアーカイブでの調査を行い、目録を作成することで、資料の所在状況を正確に把握できるように努める。フィルム資料のデジタル化作業も進めるが、特に貴重と思しき作品に関しては、フィルムへの複製を優先的に行なう。
戦時中から戦後1950年代にかけて、中国でも幻灯による文化工作が盛んに行なわれ、それが日本における社会運動における幻灯の利用にも影響を及ぼしていたことが明らかになっている。国会図書館関西分館などに一部が所蔵されている中国側の幻灯資料の精査に着手することで、中国と日本の幻灯文化の交流の実状についても調査と解明を進めてゆく。
幻灯に関する最大の国際学会であるThe Magic Lantern Societyの国際コンベンション及びジャーナルに、研究成果を英語で発表し、国際的な研究者及び幻灯上映者のコミュニティにおいても従来ほとんど知られていなかった、戦後東アジアにおける幻灯文化の発展の実態の周知に努める。

次年度使用額が生じた理由

2017年度に英国への出張予定が生じたため、海外旅費を次年度使用に回すことにした。

次年度使用額の使用計画

英国・バーミンガムで2017年4月28日~30日に開催されるThe Magic Lantern Society国際コンヴェンションに参加し、幻灯『せんぷりせんじが笑った!』デジタル版上映並びに英語レクチャーを行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 満洲から筑豊へ ― 幻灯『せんぷりせんじが笑った!』(1956)をめぐる「工作者」たちのゆきかい―2016

    • 著者名/発表者名
      鷲谷 花
    • 雑誌名

      映像学

      巻: 96 ページ: 5-26

    • DOI

      http://doi.org/10.18917/eizogaku.96.0_5

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 1930 年代ー1950年代のジョージ・H・カーと 環太平洋文化交渉の地政学2016

    • 著者名/発表者名
      吉原 ゆかり
    • 雑誌名

      筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻 [編]『文藝・言語研究』

      巻: 70 ページ: 41-65

    • DOI

      http://hdl.handle.net/2241/00144122

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東アジア連環画の連環 : 中国から日本、韓国へ2016

    • 著者名/発表者名
      鳥羽耕史
    • 雑誌名

      アジア遊学

      巻: 199 ページ: 186-198

  • [雑誌論文] 記録映画、テレビ、サブカルチャー研究とアーカイブの現状2016

    • 著者名/発表者名
      鳥羽耕史
    • 雑誌名

      日本近代文学

      巻: 94 ページ: 212-218

    • 査読あり
  • [学会発表] 戦後日本映画における中国古典の映画化―日本、大陸、香港、東南アジアに跨る大衆文化の記憶2016

    • 著者名/発表者名
      アン ニ
    • 学会等名
      清華大学・国際日本研究センターの共催によるフォーラム「グローバル時代における東アジアの大衆文化研究」
    • 発表場所
      清華大学外国語学部
    • 年月日
      2016-11-12
    • 国際学会
  • [学会発表] 中国引揚映画人特集-幻灯と映画-2016

    • 著者名/発表者名
      鷲谷花、アン ニ
    • 学会等名
      中国引揚映画人特集
    • 発表場所
      神戸映画資料館
    • 年月日
      2016-09-04
  • [学会発表] 幻灯『せんぷりせんじが笑った!』(一九五六)をめぐる文化《工作者》たちの行き交い2016

    • 著者名/発表者名
      鷲谷花
    • 学会等名
      東洋大学日本文学文化学会2016年度大会
    • 発表場所
      東洋大学白山キャンパス
    • 年月日
      2016-07-09

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公開日: 2018-01-16  

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