当計画は、人間の主観性及び人文主義的理想等が疑問視されるいわば「ポスト・ヒューマン」の現代において、芸術、文学、思想の領域で扱われてきたメランコリーの持ちうる意味を探ろうとした。パノフスキー等の「土星とメランコリー」、J. クレール等の「メランコリー:西洋の天才と狂気」の延長線上で、主に絵画的表象の研究がなされた。メランコリーは自己の反省・反射と不可分であり(屈んだ姿勢がその象徴)、それは常に自分と自分を取り巻く環境を巡る懸念を伴う。だがかつてのメランコリー(創造的でもありえる悲しい情熱)がいわゆる鬱に取って代わられたかのような現代、我々はこの(自己)省察の意義について自問する必要がある。
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