本研究は寺山修司と佐藤信を取り上げ、それぞれの創作における方法論を見直すことを目的としている。本年は主に「野外における劇空間の構築と演技」をテーマに、両名が野外に演劇空間を拡張していくにあたって、どのような変化があったのかを検証した。 当初の計画では新しい作品を取り上げる予定であったが、前年までの調査ではまだ明らかにできなかったことを調べることを優先した。寺山については、本研究の初年度から初期作品を分析してきた。そこで問題になった、寺山が「見世物小屋」に抱いたイメージはどのように形成されたのかについてあらためて掘り下げると共に、70年代に入り、市街劇を展開するにあたってなぜ紅テントのような仮設劇場を必要としなかったのかを著作を中心とする資料を通して検証した。 佐藤に関しては、まず前年までの調査の延長として、アンダーグラウンド・シアター自由劇場を経験するなかで演劇空間に対するどういった感覚が形づくられていったのかを検証し、それがどのように黒色テントへと引き継がれたのかを考察した。また、新しく開場した佐藤の劇場での活動から佐藤が劇場という空間をどのような場として機能させていこうとしているのかを考察した。また、佐藤の創作に関する資料の一部をリスト化した。 当初の計画で予定していたものの、分析に着手できなかった作品があるため、それについては今後の研究で分析していくと共に、本研究の成果は論文としてまとめ発表したい。
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