本年度も、演劇雑誌と映像資料の収集と整理を並行して進めた。あわせて、音声資料の整理も進めた。 演劇雑誌については、雑誌『芸能』のデータ化を行い、『道頓堀』の所蔵調査を行った。従来、数多いとはいえない演劇雑誌研究の中でも、グラフィック誌は等閑視にひとしい扱いを受けてきたが、今年度は『劇と映画』(のちに改題して『劇』)のほぼ全冊を収集・整理して、演劇博物館所蔵本と対照することができた。こうした大型の判型の雑誌をデジタル化するための方法についても検討を重ね、メドを得ることができた。これらの調査を基盤として継続課題への先行調査も兼ねて、ニューヨークの図書館・書店等における雑誌・音源資料・映像資料などについて調査を行った。 映像資料については、従来知られている映像を網羅・検討する形で、「歌舞伎映像大全集」として歌舞伎学会大会において集大成する機会を得た。別途、松竹所蔵の歌舞伎映像資料についての聞き取りの機会を得て、1980年代から90年代にかけて商品化を念頭に置きながら撮影された松竹独自映像が、すでにCS放送でおおかたが世に出ていることを確認することができた。 以上のような成果と検討の結果は、国際音楽資料情報協会日本支部におけるシンポジウム「公演資料の収集と整理~演奏会プログラムのデータベース構築に向けて」における報告(6月3日)、デジタル文化財創出機構のシンポジウムにおける報告「資料のデジタル化と演劇の研究」(10月31日)、歌舞伎学会大会におけるシンポジウム「デジタル化時代の歌舞伎研究」(12月10日)、コロムビア大学のワークショップにおける発表「歌舞伎における<Authorship>」(3月3日)、UCLAにおけるワークショップ「Technologies and Methologies in Japanese Theater Studies」(3月29日)に活かすことができた。
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