研究課題/領域番号 |
15K02195
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研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
鏑木 陽子 東京純心大学, 看護学部, 教授 (10638357)
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研究分担者 |
大角 欣矢 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90233113)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シャイト / 初期バロック音楽 / 複合唱音楽 / 初版譜 / 筆写譜 / 校訂譜 / パートブック / 受容史 |
研究実績の概要 |
1.【当該史資料の現物確認調査】『カンツィオネス・サクレ』の初版譜の現物確認をハンブルク国立大学図書館において行なった。楽譜の装丁、紙質、インク、使用状況、書き込みの有無、サイズ等を調査した。出版年が同じであっても、史料により微細な違いがあり得ることを想定し、バイエルン州立図書館所蔵の当該資料の画像を参照しながら慎重に確認を進めた。その結果、ひとつの作品において、ハンブルクの史料とバイエルンの史料では、記譜された音に相違があることが判明した。1620年出版であることは同じであるが、ハンブルクの史料は訂正版であると考えられる。また当該作品の鍵盤用トランスクリプションの筆写譜がスロヴァキア国内にあるという情報を得ており、史資料の所在・閲覧可否について現地との確認作業を継続中である。2.【史資料のデジタル画像化】ベルリン国立図書館において『カンツィオネス・サクレ』筆写譜のマイクロ資料を閲覧し、181コマのデジタル画像化を実施した。 3.【スコア作成】『カンツィオネス・サクレ』所収作品のうち12曲(予定)を確定し、楽譜の入力作業を進めている。 4.【声部編成の調査】初版譜は8冊のパート・ブックから成り立っており、シャイト全集(1933年版)がどのようにスコアを作成しているかを調査した。これは校訂譜を作成するにあたって必要な調査である。校訂作業を行なうため、当該資料を曲ごと、パートごとに見出しをつけて整理を行なった。 5.【楽器の調査】ドイツ北部リュディングヴォルトおよびアルテンブルッフにおいて、シャイトが活躍した17世紀に製作された2台のオルガンの試奏および調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シャイトの『カンツォオネス・サクレ』に関わる主要な史資料の現物確認調査、デジタル画像化を完了した。校訂譜作成にあたり初版譜と全集版(1933年)の比較のための資料整理、声部構成に関する調査、楽譜のWeb公開を想定したスコアの作成、レクチャーおよび実演のための調査が、ほぼ予定通りに進んでいるため。 ただし、実演およびレクチャーの会場および日程は、発表を予定している日本オルガン研究会と予定会場(パイプオルガンを有する東京都内の教会)との調整が必要なため、確定できていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.【当該史資料の現物確認調査】シャイトの声楽作品の受容『カンツィオネス・サクレ』の鍵盤用トランスクリプション筆写譜の調査をスロヴァキア国内において行ない、可能であればデジタル画像化を行なう。 2.【スコア作成】『カンツィオネス・サクレ』所収作品のうち12曲について、初版譜、1933年版を照らし合わせながら、楽譜の入力作業を進めていく。楽譜の体裁については、随時、研究協力者である声楽家と検討を加えながら、整えていく。 3.【楽曲分析および解説】スコアが完成したものから順に楽曲分析を進めていく。また同時に各曲の編成、演奏機会(教会暦)等をまとめ、解説書を作成する。 4.【歌詞対訳の完成】歌詞対訳を完成させ、聖書の該当箇所の特定、教会暦との関連についても明らかにする。 5.【演奏法の検討】声部編成、器楽の使用に関して、手写本、シャイトと同時代のシュッツ、シャイン、ミヒャエル・プレトリウスの出版譜に見られる版画も手がかりに演奏法を検討する。また入力が完了したスコアは順次ウェブサイトにおいて公開する。 最終年度となるので、日本オルガン研究会例会における研究発表(レクチャーと演奏会)を行ない、本研究の成果発表としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画にはなかったスロヴァキアにおける現地調査を29年度に行なうこととなり、国外旅費を確保する必要が出てきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
スロヴァキアにおける史資料の現地調査を29年9月に実施することとし、国外旅費を使用する。ベルリン在住の研究協力者には欧州の図書館、教会、大学への問い合わせや翻訳を業務委託する。入力に相当の時間と労力と技能を必要とするのスコア作成者への謝金、また実演する際の演奏家への謝金、Web公開のための費用等に、研究費の使用額を充てる予定である。
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