本研究は、演奏と作曲とが夫々の専門領域として分化し、演奏家は演奏の技術に重きを置き、作曲をしなくなってしまっている現代の日本の音大におけるクラシック音楽家の教育を考え直し、即興演奏を通した総体的な音楽活動を活性化することを目的とした。新しい時代を生きるクラシック音楽家にとって、従来の音楽教育で習得したスキルに留まらない、より横断的な音楽能力を身につけることが必要だと考えたのは、社会の新たなニーズや新たな音楽の場を開拓して行くことが、変遷する社会に対応する音楽家となることに繋がるからである。 今年度は、ハーグ王立音楽院(オランダ)のカールスト・デ・ヨング先生を洗足学園音楽大学に招聘し、公開講座を実施して頂いた他、ノーム・シバン先生のジュリアード音楽院及びカーティス音楽院(アメリカ)での即興演奏の授業、ジェフリー・ブリルハート先生のイェール大学でオルガン即興の授業を視察させて頂いた。 このようなクラシック分野における即興演奏教育先行的事例を視察することによって得ることができた知見、関連書籍の研究、そして研究者自身による実践経験を、我が国の音楽大学にて紹介する場を少しずつ増やすことができた。今年度の実績としては、単発的な講座を既存の授業と絡めて取り入れた他、コンサートの一部に即興演奏を取り入れる試みを実施した。 このような取り組みを通して、音大生の即興演奏に対する関心は高いことがわかり、引き続き研究を進めていく必要性を感じている。
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