モダニズム期における東欧イディッシュ語圏の表象文化について、離散地におけるホスト文化との接触や、ハスカラ期のユダヤ教内部からの自己変革を経る中でどのような特徴を帯び、また変化を遂げたのか、主にイディッシュ音楽と舞踏のジャンルとその表現スタイルにフォーカスすることで研究推進とその成果の社会での共有を目指した。この分野での先端的な情報収集と研究者らとの交流を目的に各年度夏季にドイツ・ヴァイマールで開催されるイディッシュ音楽文化に関するワークショップYiddish Summer Weimar(以下YSW)に参加した。平成29年度はアラブ圏のユダヤ音楽にスポットが当てられた。イラクのユダヤ音楽の第一人者であるヤイール・ダラル氏を特別講師に招き、アラブ音楽の影響を強く受けたユダヤ音楽が紹介された。各年度のYSW参加の成果は、京都と東京においてそれぞれレクチャー・コンサートの形式で発表し、情報の共有を図ることができた。 平成28年度と29年度にはYSWの主宰者でありイディッシュ音楽研究と演奏分野で主導的な役割を果たしてきたアラン・バーン博士と、イディッシュ音楽演奏家のマーク・コヴナツキー氏、イディッシュ・ダンスの吉田佐由美氏をドイツから招聘し「東欧ユダヤ音楽ワークショップ」を東京にて開催した。29年度は30年2月にシアターXにて5日間の日程で開催したところ、演奏家や音大生、研究者など約20名の参加を得た。代表的なダンス・ジャンル「ホラ」「フレイラハス」「ブルガール」「シェーア」などのレパートリーとダンス・ステップの関連性を実技を通して理解を共有した。またユダヤ教の聖歌との関連性が強いノン・ダンス・ジャンルのレパートリーについても、その歴史的宗教的背景とともに理解の共有を図った。 海外調査と連動したレクチャー・コンサートおよびワークショップの成功により、本課題の研究目標は概ね達成された。
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