最終年度として、これまでの成果を口頭発表、論文化した。またドイツ・ハンブルク大学、アメリカ・コロンビア大学にて、海外における風土記研究の現状を調査するとともに、関連文献・資料収集を行った。 まず近世における風土記研究の一例として、風土記逸文収集の端緒というべき今井似閑『萬葉緯』について、「風土記逸文-今井似閑『萬葉緯』をめぐって-」(風土記研究会公開シンポジウム「風土記を伝えた人々」2018年8月18日 於:出雲弥生の森博物館)として発表、同成果を論文化した(『風土記研究』第39号 2019年3月)。 また近代の風土記研究として、近代的国文学の基礎を築いた芳賀矢一の風土記観を検討、「芳賀矢一と風土記」(『論集上代文学』第39冊 笠間書院 2019年刊行予定)としてまとめた。さらに20世紀初頭、風土記のドイツ語訳を行ったドイツの日本学者・カール・フローレンツについて、「19世紀末~20世紀初頭における風土記享受―カール・フローレンツを中心に―」(2019年3月30日、古代文学研究会 於:東京大学)として発表、同内容を論文化する予定である。 さらに、これまで行ってきた風土記享受の研究について、広く一般に伝えるものとして、「風土記はなぜ読まれたのか」(『古典文学の常識を問うⅡ』勉誠出版 2019年5月刊行予定)、「その後の『風土記』―『風土記』をめぐる人々のものがたり」(『別冊太陽 風土記』2018年11月)などを執筆した。 そして上記の成果をふまえた風土記享受に関する一般書を吉川弘文館から刊行する予定である。
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