本研究は、『百人一首』の文献学的研究を行い、『百人一首』の古注の相互関連について調査・考察したうえで、その成果を踏まえて、『百人一首』の注釈学的研究を行うという手順をとった。注釈学的研究においては、それぞれの歌人の家集における位置づけやそれとの関連を重視することによって、作者の表現意図を正しく析出するという方法を採用した。その過程において。それぞれの作品に共通して「縁語的思考」と呼ぶべき表現意識が見られることを発見した。この「縁語的思考」を基軸にして、和歌史の中で個々の和歌および『百人一首』という作品を意味づけた。その成果は、『中世和歌史の研究 様式と方法』の単著として結実した。
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