研究課題/領域番号 |
15K02214
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
山本 まり子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 非常勤講師 (80385971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 和漢朗詠集 / 粘葉本 / 伊予切 / 雲紙本 / 関戸本 / 書 / 本文 / 世尊寺家 |
研究実績の概要 |
『和漢朗詠集』諸伝本の収集、集成を行い、形態・本文、及び書(筆跡)等の面から主に平安時代の書写とされる諸伝本の実態を明らめる事が当該研究の目的である。 本文研究の根幹を成すのは書の研究である。当該作品の各伝本の性格を見極める上で書写者・書写年代等の情報は欠かせない。一方、本文研究の成果は動かし難い事例として感覚的に論じられがちな書の研究に資することがあり(書の領域において導き出された結論を揺るがしかねない)、それらは不可分のものといえる。しかしながら、先学の研究では定説のない部分が存する。その二つの領域の研究が同時に進められることによって初めて得られる知見もある。 その観点に立ち、先学による研究の成果を元に諸伝本の系譜等について再考し、また、時代の流れとともに変遷する諸相の解明に努める。 当該年度においては①雲紙本・関戸本の本文の入力作業を行い、また、②雲紙本・関戸本(雲紙本類)と粘葉本・伊予切(粘葉本類)との関係について形態的な面を中心に再検討を行った。その結果、当該四本について、根源的繋がりがあったことは確かであり、それらの原形の大枠は一種に集約されると解する方が自然であると推測した。生成過程における雲紙本類→粘葉本類という繋がりも考えられるものの、先学の所論である「初稿本」(雲紙本・関戸本)から「精撰本」(粘葉本・伊予切)へと一元的成長を遂げたというその捉え方について首肯し難いという結論に至った。一方、③伝藤原公任筆唐紙切の本文・書、及び表記について、再検討を行った。そこでも先学の見解とは異なる点が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、主に、雲紙本・関戸本を取り上げ、本文入力作業等を行い、また、粘葉本・伊予切との関係について形態的な面を中心に再検討を行った。その研究成果を踏まえ、諸伝本の系統立てを試みた。また、世尊寺家、及びその周辺に継承された可能性が考えられる伝本について調査し得た。
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今後の研究の推進方策 |
①各所蔵機関へ赴き、『和漢朗詠集』諸伝本について実地調査等を行う。 ②複写物・紙焼き等の入手、『和漢朗詠集』の本文集成、異体字の模写等の作業を行う。③それらをもとに、『和漢朗詠集』各伝本の位置、性格について考察を行う。④その際、書の研究では、世尊寺家、及びその周辺に継承された可能性が考えられる伝本に焦点を当てる。 ⑤上記の解明に努めるべく、当該研究に関連する他の作品・文献の調査を行う。 ⑥『和漢朗詠集』諸伝本に関するデータベースの構築を行う。
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