本研究では、中世後期の政治や文化を支えた「知」のありようや意味について、百科全書的な特徴を持つ文芸作品群の生成と武家の学問との関わりという視点から解明した。具体的な成果は、以下の通りである。1.和訳本『帝鑑図説』が単なる明版『帝鑑図説』の訓読ではなく、中世の学問の成果を踏まえたものであることを論じた。2.『源平盛衰記』が中世の武家の実用的な教養書を志向していた可能性を指摘した。3.行誉書写本『八幡宮愚童訓』の特徴や『アイ嚢鈔』との関係を明らかにした。4.武家の儀式の場に飾られた書物の変遷を通して、武家の学問と支配階級としての武家のアイデンティティ形成の関係について論じた。
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