本研究は、写本における平仮名の字母を分析することを通して、諸本の関係性を考察することを試みたものである。本研究で明らかとなったことは、(1)『紫式部日記』の黒川本は優れた本とされているが、肥前松平文庫本や扶桑拾葉集所収版本と比較していくと、その特異性が浮かびあがってきたこと。(2)三条西家本『源氏物語』篝火巻は、日本大学本を祖として、宮内庁書陵部後陽成院宸翰本や京都大学図書館中院文庫本が派生したらしいこと。(3)『大江千里集』の伝寂蓮本を祖として、小城鍋島文庫本の二本が派生したらしいこと。以上の三点が明らかとなった。
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