研究課題/領域番号 |
15K02218
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
前城 淳子 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90336355)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 琉歌 / トゥバラーマ / トーガニ / 琉歌詩形歌謡 |
研究実績の概要 |
本年度は国頭村与那のウンジャミ、石垣市川平の結願祭、宮古島市来間のヤーマスプナカ、宮古島市上野のサティパロウ、粟国島のマースヤーの実地調査を行った。 国頭村与那のウンジャミの後に、村の女性達によってウスデークが踊られた。首里天ぢゃなし、宇地泊節、恩納節、安里八幡、謝敷節、干瀬節などの琉歌詩形の歌謡が演唱されていた。 昨年度実施する予定であった石垣市川平の結願祭を、今回ようやく実施することができた。祭祀の全体像を確認するとともに、歌がどのような場面で演唱されるか確認することができた。川平の結願祭で演唱された芸能のうち、座開きの歌、繁昌節、弥勒節、御前風、川平節、瓦屋節、真謝井節、桃里節、ふつばが琉歌調の歌詞が歌われていることが確認できた。これら琉歌調の歌詞を中心に歌謡を文字化し、採集地点名、祭祀名、歌われた場面や場所、節名、歌詞、使用言語の項目ごとに整理を行った。 宮古島市のヤーマスプナカでは、過去一年間に生れた子の紹介の際に、沖縄の民謡が演唱され、カチャーシーが踊られていた。三線と太鼓の伴奏によるもので、唐船ドーイ、豊年音頭などであった。宮古島市上野のサティパロウでは集落を回る際に歌が演唱されるとのことであったが、今回は演唱されず、掛け声のみであった。粟国島のマースヤーでは、大みそかの夜に一年の厄払いと新たな年の五穀豊穣、家内安全、健康を寿ぐために、各家々を巡り歩いて芸能が披露される。11地区に分かれて一斉に行われるため、全てを確認するることはできなかった。 また、前年に引き続き、文献に収録された琉球の抒情歌謡の収集と整理を行った。まだ完成にはほど遠いが、この中からトゥバラーマで「花」が歌われている資料を抽出して、「花」がどのような「こころ」を表わし、どう用いられているかについて分析し、論文「トゥバラーマに歌われた<花>について」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定していた宮古諸島と沖縄本島とその周辺離島での調査がおおよそ実施することができた。また、昨年度までに見ることができなかった石垣市川平の結願祭の実地調査も実施することができたことは、おおむね順調に進展しているとして良いだろう。 また、歌謡をどのように表記するか、そしてそれをどう整理するかといった歌詞の表記についての検討を開始することができた。歌謡の言語は、沖縄、宮古、八重山のそれぞれで発音が大きく異なっている。琉球の抒情歌謡の表現研究をするために、統一されたデータによる索引化が必要であると思われる。特殊な記号を用いずに、多くの人が理解しやすい表記であることにも注意しながら、今後も検討を続けたい。 ただ、謝金を利用して、歌謡や琉球の言語について学んでいる学生に、データの入力と整理をしてもらう予定であったが、学生との時間の調整がうまくいかず、今回は予定していた分の作業を行うことができなかった。だが、資料の収集は順次行っており、次年度で計画的に行えば最終的な目標は達成されるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も本年度に引き続き、宮古諸島と沖縄本島及びその周辺離島で行われている祭祀を実地調査し、そこで演唱される歌謡の収集と整理を行う。地域によって、祭祀の日程や日取りの方法が異なるため、なるべく早く日程の確認を行い、計画的に研究を推進できるよう努めたい。 祭祀の実地調査と並行して収集した資料の整理を行い、琉球の抒情歌謡のデータベースの完成を目指す。基礎的なデータ入力の他に、統一表記による索引化や、それぞれの歌謡の主題の分析なども進める。早めに作業の計画をたて、確実に実施できるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実地調査はほぼ予定通り行うことができ、旅費については予定以上の予算執行となった。一方で、謝金を利用して琉球の抒情歌謡のデータ入力と索引作成を予定していたが、担当者との時間調整ができず、予定していた時間の作業を行うことができなかった。その為次年度使用額が生じたが、次年度は作業計画を早めにたて、作業を担当する学生との調整を行い、予定通りの執行ができるように努める。
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