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2018 年度 実績報告書

禅律文化圏と説話伝承文学との交渉についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K02219
研究機関大阪市立大学

研究代表者

小林 直樹  大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40234835)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード無住 / 宗鏡録 / 沙石集 / 延寿
研究実績の概要

昨年度の研究で、無住の著作の中でも、とりわけ『沙石集』にとって『宗鏡録』が思想や発想の非常に深いところに影響を与えている重要な書物であることを明らかにした。それを承け、本年度は『沙石集』の『宗鏡録』投影箇所について両書の前後の文脈を十分に読み込みながら、その受容の相を検討した。
まず、夫を後妻に、妻を間男に取られても嫉妬の心を起こさぬ稀代な人々の挿話を語る「嫉妬の心無き人の事」(米沢本巻9)では、『宗鏡録』に由来する短い中国の諺が引用される。実は、この『宗鏡録』の前後の文脈では、人間の「情執」をめぐる「自性清浄心」とそれを曇らす「阿頼耶識」の関係が説かれており、無住はその文脈を強く意識して『沙石集』の説話構成を行っていると見通される。一見、尾籠で間の抜けた味わいを有する説話の登場人物の背後に無住は「自性清浄心」を見ているのである。と同時に、無住がそうした視点を『宗鏡録』から得たことにより、嫉妬の心をもたないという、説話文学史上極めて稀なテーマによる説話構成が可能になったともいえるのである。
さらに、「諸宗の旨を自得したる事」(米沢本巻10末)では、『沙石集』中でも最も枢要な山中の老僧の物語が語られるが、その後に、『宗鏡録』を出典とする演若達多説話が引用される。老僧の物語は『宗鏡録』の文脈の助けを借りることで、作品中における着地点を見出せたともいえるのである。そして、老僧の物語の主題と『宗鏡録』の主張の親和性を考慮すれば、両者の出会いは半ば必然であったと考えられるのである。。
以上の研究は、無住の発想や思想を『宗鏡録』が深いところで規定している側面があったことを実証的に明らかにした点に重要な意義を有している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 『沙石集』と『宗鏡録』2019

    • 著者名/発表者名
      小林直樹
    • 雑誌名

      日本文学研究ジャーナル

      巻: 10 ページ: 印刷中

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公開日: 2019-12-27  

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