研究課題/領域番号 |
15K02220
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
竹本 晃 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (60647832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 万葉 / 古代史 / 考古学 / 木簡 / 上代文学 |
研究実績の概要 |
本研究の課題である古代史学・考古学を援用した万葉歌再解釈のための土台作りにおいて、歌に関係する地の出土遺構や、歌の語句に関係する木簡を掲載する発掘調査報告書を一首ごとに集めることを目指しているが、今年度は、研究実施計画に基づき、歌に関係する地の発掘調査報告書の捜索に主眼を置いた。 踏査該当地が近隣に多いため、遠方地から先に進めた。主な踏査地は、熟田津(8番歌)、伊良虞(23・24・42番歌)、手節の崎(41番歌)、安礼の崎(58番歌)、伊勢斎宮(105・106番歌)である。 熟田津の比定地は、諸説あるが、現在は松山市の久米官衙遺跡群が候補の一つに数えられている。久米官衙遺跡群は、発掘調査の進展に伴い、いくつかの遺跡を複合した呼称である。熟田津の場所はともかく、同時代において大規模な官衙遺跡があったことは事実であり、何らかの関係があるとみなし、目録に加えた。 伊良虞(23・24・42番歌)、手節の崎(41番歌)、安礼の崎(58番歌)は、伊勢湾エリアにあたる。なかでも手節の崎の比定地である答志島では、継続的な発掘調査が行われており、同時代の集落跡も確認されている。また、伊勢斎宮跡においても、継続的な発掘調査と過去の成果の見直し、そしてそれらの成果に基づいた建物復元作業が進んでおり、現地において最新の調査成果が得られた。 ただ、こうした遺跡の群としての再把握や、以前の報告書の再検討は、他分野の研究者にとって、ひじょうにわかりづらい工程である。今後、目録化作業を進めていくうえで、複雑な報告書の構造に十分留意し、どれを読めば最短で把握できるかを検討し、視覚的に表現していかなければならないと気付いた点は収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
踏査すべき地のなかで、季節・天候などの条件面で選択の余地が生まれ、いずれかを優先させた結果、遠方地をいくつか残してしまったため、やや遅れていると判断した。 また、そのことを十分消化できなかった要因の一つに、所属変更にかかる繁多も考え得る。いずれも予期できない事象であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遠方地の踏査を早めに設定し、数多い近隣の踏査に備える。近隣の踏査地は、数は多いが、重なるところも多いため、当初の計画に十分追いつける余地はある。また、遅れが目立つようであれば、対象とする巻を限定し、内容を充実させる方針に切り替える。
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次年度使用額が生じた理由 |
上のような使用額が生じた大きな理由は、物品費(大半は書籍代)をほとんど消化できなかったことである。一つは、外部の研究員であるため、内部の検収システムにうまく合わせることができず、購入するタイミングを逃してしまったこと。もう一つは、踏査先で購入予定をしていた物が、完売や購入不可のケースが多かったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度からの所属変更により、事務処理にかかる不都合はなくなるため、前年度に消化できなかった分を十分補うことができる。踏査先での購入物については、購入不可である場合は、現地の図書館での複写(「その他」の費目)で代替し、なるべく予算に近い経費の使用を心がける。
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