研究課題/領域番号 |
15K02220
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
竹本 晃 大阪大谷大学, 文学部, 講師 (60647832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 万葉 / 古代史 / 木簡 / 人名 |
研究実績の概要 |
本研究の課題である古代史学・考古学を援用した万葉歌再解釈のための土台作りにおいて、歌に関係する地の出土遺構や、歌の語句に関係する木簡を掲載する発掘調査報告書を一首ごとに集めることを目指しているが、今年度は、研究実施計画に基づき、歌の語句に関係する木簡および木簡を掲載する発掘調査報告書の捜索に主眼を置いた。 巻第1の1番歌から順に、奈良文化財研究所の木簡データベースをたよりにしつつ、歌の語句を網羅的に検索していった。そのなかで、木簡の情報を得ることによって、歌の内容が充実したり、新たな意味合いをもつものに焦点をしぼって目録に採用することとした。 実際に進めてみると、木簡に関係するものには、人名や地名などの固有名詞の割合が高いことが特徴としてあげられる。また、これまで木簡の情報が詳しいとされてきた新編日本古典文学全集本の『萬葉集①~④』の時点で拾えていなかった新しいデータが多いことも、今回の調査で明らかとなった。 こうした目録化作業を進めていくなかで、気づいた点を発展させ、一つは論考(「万葉歌の人物の特定に向けて─佐伯赤麻呂と門部王─」)としてまとめた。よく用いられる「大夫(ますらを)」という語が、武人や男らしさやなどの性格面にとどまらず、現在就いている官職(武官)をイメージさせる一つの表現であることを明らかにした。人名についても、万葉集で歌を詠んでいる人物が、じつは過去に出土した木簡に記載されていたことをつきとめ、かつ木簡を用いた万葉研究の方法論を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、天候や所属変更などの予期できない状況によって予算をあまり消化しきれず、「やや遅れている」と判断した。それに対し今年度は、前年度分に使う予定であった物品などの消耗品の支出をまかなうことができ、与えられた予算の使用状況としては、順調に進めることができていると判断した。旅費についても、天候や日程の都合などもあり、すべてが順調というわけではないが、参考となる資料の調査や、歌に関係する地域の踏査などは、遅れているというような状況ではなく、順調に消化できていると判断した。 研究面については、本研究が判断を伴う網羅的な入力作業によるため、取捨選択により外してしまったものも多く、結果的に分量としては絞った状況になっているが、一通り目録化は終えている。ただし、現段階では粗々での入力作業でしかなく、見直しや全体での調整などは必要であるが、これについては次年度に譲りたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、『万葉集』の巻第1・2に関する網羅的な目録作業であるため、いまだ踏査できていない地域を最優先にし、まずは目録に空欄ができないように努力する。目下のところ、難しい場所として対馬の踏査が残っている。対外情勢の関係もあるので、折を見て進めていく予定である。 平成29年度は、これまで調査してきたものを相互に組み合わせることを目標としている。その作業を通じて、新たに調査しなければならない部分も出てくるものと予想されるが、できるかぎりその都度解決していく所存である。 平成29年度後半は、凡例の作成も含めて、まとめた目録を整理・調整する作業に入る。最終的には成果報告書として製本し、各地に発送する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費や物品の振り込み代金など、正確な金額が確定するまでに時間を要するため、結果端数として残ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、端数をうまく使い切れるよう、こまめに事務と相談し、進めていきたい。
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