平成27年度は、予備調査及びデータ化の試験を経て、鎌倉時代の古注釈とその影響下にある注釈書及び挿絵のおよそ3分の1をデータ化した。 予備調査とデータ化にむけての準備として、古注釈については、片桐洋一『伊勢物語の研究・資料篇』(明治書院、1969)、『伊勢物語古注釈書コレクション』(和泉書院、1999~2006)、『伊勢物語古注釈大成』(笠間書院、2005~)所収の注釈書を中心に、全体の分量を確認し、データ化の計画を立案した。一部試行の結果が良好であったため、スキャナを用いたスキャン→OCRソフトによる読み取り→テキストデータ化→原本写真との照合・確認 の手順で進めることとした。おおむね計画通りに進行している。 並行して、伊勢物語絵入本及び注釈書を調査し複製を入手した。27年度は、慶應義塾図書館蔵「伊勢物語小絵断簡」、同「定家流伊勢物語註」、和泉市久保惣記念美術館蔵「伊勢物語絵断簡(白描絵断簡)」等である。またアメリカ・インディアナポリス美術館及びクリーブランド美術館の蔵品調査の機会に恵まれたので、伊勢物語を画題とする屏風・掛幅・色紙等を調査し、複製を入手した。 また、『伊勢物語絵巻絵本大成(資料篇)』(羽衣国際大学日本文化研究所編、角川学芸出版、2007)所収の絵入本のうち、全体のおよそ3分の1について、章段(場面)ごとの画像データを作成し、調査した画像とともに、テキストデータと連動する形で集成した。 以上の成果をもとに、論文「扇絵の中の『伊勢物語』」(『百舌鳥国文』第27号)を執筆した。
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