平成29年度は、前年度に引き続き、スキャンが終わった古注釈書のテキストデータ化、新たに調査した古注釈書の翻字、画像データの集成を行った。 テキストデータ化については、全体のおよそ三分の二程度終えることができた。当初は注釈書ごとに進める予定であったのを、昨年度、章段(場面)ごとに進める方法に変更し、今年度も同様のやり方で進めた。おおむね順調に進行している。 並行して、静嘉堂文庫所蔵の「伊勢物語絵巻」(断簡)、東京国立博物館所蔵の住吉如慶筆「伊勢物語絵巻」の実地調査の機会に恵まれたほか、五島美術館、サントリー美術館、出光美術館等において、伊勢物語を画題とする屏風・掛幅・色紙等を調査し、複製を入手した。また、国文学研究資料館にて、紙焼き写真及びマイクロフィルムにより伊勢物語注釈書を調査した。このほかインターネット上に公開されている古注釈書の画像を積極的に活用し、複製を入手した。これにより、章段(場面)ごとに集成したテキストデータと比較しつつ、古注釈書における伊勢物語理解の諸相を分析することができた。 挿絵については、『伊勢物語絵巻絵本大成(資料篇)』(羽衣国際大学日本文化研究所編、角川学芸出版、2007)所収の絵入本の画像のほか、その後の調査で得られた画像を加えつつ、章段(場面)ごとの画像データを作成し、テキストデータと連動する形での集成をすすめている。今年度は全体のおよそ三分の二ほどについて終えることができた。 以上の成果をもとに、論文「『伊勢物語』の本文・解釈と挿絵―「白描伊勢物語絵巻」第二十七段の場合―」(『国語と国文学』平成30年1月号)を執筆した。
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