研究課題
基盤研究(C)
『伊勢物語』の中世の受容史を、古注釈と挿絵を手がかりとして明らかにした。古注釈については、公刊されている代表的な注釈書を中心に、鎌倉・室町時代から江戸時代初期にかけて行なわれていた説を章段(場面)ごとにデータ化して一覧にした。挿絵については『伊勢物語絵巻絵本大成』(角川学芸出版、2007年)を中心にファイル化し、章段(場面)ごとに一覧にして、古注釈のデータと連動させた。これによって、中世の伊勢物語理解がどのように絵に反映したのかを考察し、論文等として発表した。
日本文学
平安時代の物語の中でも伊勢物語は、早くから絵画化されたが、注釈の歴史も深く長く、中世には数多くの古注釈や絵巻・絵本が生み出された。古注釈と絵画は、豊かな伊勢物語受容の歴史を物語るものと言えよう。本研究では、鎌倉・室町時代の注釈を章段(場面)ごとにデータ化して一覧にし、現存する絵巻・絵本の挿絵と連動させて比較検討することにより、挿絵の背景にどのような伊勢物語理解が読み取れるのか、また流派や時代による解釈の相違がどのように絵に反映したのかを追究し、中世の伊勢物語受容の一端を明らかにした。