研究課題/領域番号 |
15K02226
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
平野 多恵 成蹊大学, 文学部, 教授 (60412996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 釈教歌 / 新後撰和歌集 / 続千載和歌集 / 後宇多院 / 歌占 / 託宣歌 / おみくじ / 明恵 |
研究実績の概要 |
中世後期の勅撰和歌集の成立は当時の政治状況と深く関わる。今年度は、後宇多院の命になる『新後撰和歌集』『続千載和歌集』における釈教部の構成を詳細に検討し、後宇多院による密教興隆政策との関わりを見出し、両集の釈教部から浮かび上がる宗教性と政治性を明らかにした。二集に共通して指摘できるのは、従来の勅撰集における釈教歌とは事なり、真言密教重視の傾向があることである。とくに『続千載集』の釈教歌は後宇多院詠をはじめとする密教歌群が冒頭に置かれる他、院の宗教政策を支える密教僧の歌も収められている。勅撰集における釈教歌の選歌や構成は後宇多院による密教興隆の一表現とも捉えられる可能性を示した。この研究成果は「中世後期勅撰集の釈教歌―『新後撰和歌集』『続千載和歌集』の宗教性と政治性―」『国語と国文学』 2015年5月としてまとめた。 僧侶個人における和歌の分析としては、明恵の和歌と夢の関連について研究を進めた。 神とつながる和歌については、神の託宣歌の系譜につらなる「歌占」の研究を進めている。神の託宣歌は、室町時代には和歌占いの形に進展した。当時の和歌占いの様子は、室町時代につくられた御伽草子などにも描かれている。神の託宣歌から歌占への系譜を辿り、「室町時代の和歌占い―託宣・呪歌・歌占」(『もう一つの日本文学史』勉誠出版、2016年3月発行)として発表した。歌占本の系譜を神仏の託宣歌の系譜に連なる歌占系の御籤本の調査を行った。当該年度は長野県立図書館蔵『戸隠神社御籤文』と国立国会図書館蔵新城文庫蔵『おみくじ集』を調査し、その成果を「おみくじの近代―和歌・明治維新・新城文庫」(『愛知県立大学文字文化財研究所紀要』第2号、2016年3月発行)としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
勅撰集における釈教歌と政治との関わりの研究、僧侶における和歌の研究、神に繋がる和歌として歌占の研究、この三つの研究を予定通り並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も仏教に関する釈教歌、僧侶における和歌活動、神につながる歌占の研究を並行して進める。今後は、今回検討した『新後撰和歌集』『続千載和歌集』以外の勅撰集における釈教歌の分析の他、釈教歌と神祇歌を関連させた研究も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究資料として書籍を購入したかったが、そのための金額が十分に残っていなかったため、次年度に残した。
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次年度使用額の使用計画 |
購入希望の図書は早めに支出を行いたい。
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