研究実績の概要 |
本研究の主軸の一つである神の託宣歌や占いの歌にかんして、神と人とをつなぐ和歌の機能に着目し、その具体的なありかたと歴史的変遷を明らかにし、ポルトガル・リスボンで開催されたEAJS2017において“Poetry that Connect Humans and Gods: Oracles, Offerings, Incantations, and Entertaining the Gods”のタイトルで口頭発表を行った。また前年度の説話文学会例会シンポジウムでの口頭発表を論文化したものが『説話文学研究』52号に掲載された。国際日本文化研究センターにおいても「おみくじから歌占、託宣歌へ」のテーマで口頭発表した。これらを通して、神から人への託宣歌、人から神の奉納歌、神のお告げとしての和歌占いなどの分析をおこない、神と人をつなぐ和歌の役割や和歌と神仏をめぐる人間の営みのありかたを明らかにしつつある。 仏と和歌の問題については、釈教歌の歴史における女性の位置づけを分析し、「釈教歌と女性」(アジア遊学『東アジアの女性と仏教と文学』勉誠出版)としてまとめた。 もう一つの研究テーマである僧侶の文学的営為と和歌とのかかわりについては、前年度の中世文学会シンポジウムにおける発表を「明恵をめぐる奇瑞と信仰の磁場―白上峰の文殊顕現と春日明神の託宣」(『中世文学』62号所収)として公にした。同じく明恵と和歌との関わりを「天竺」という場の問題から検討し、「明恵の天竺幻想」(小峯和明編『東アジアの仏伝文学』勉誠出版)を公にした。
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