研究課題/領域番号 |
15K02227
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
今井 上 専修大学, 文学部, 准教授 (00553752)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 源氏物語 / 史実 / 虚構 / 戦後の研究 / 古記録 / 准拠 |
研究実績の概要 |
今年度も、前年度と同様、おもに戦後に出版された源氏物語の主要な注釈書9種類が、物語中の史実を踏まえて書かれていると思われる文脈について、どのような注を付し、いかなる見解を示しているかを、網羅的に整理した「対照表」を作成することを目標として研究を進めた。そうした基礎作業を通じて、従来の源氏物語研究において、何がどこまで検討され、指摘されてきたかを、明確に示すことが必要であると考えたからである。 具体的には、源氏物語中の史実を踏まえて書かれていると思われる場面、文章などを網羅的にピックアップすることをまず行った。続いて、「巻名」と問題になる文章を「見出し項目」として掲げ、『新編日本古典文学全集』の「巻数、頁数」を掲げた。以下、各注釈書の比較を行うが、○は、その注釈書に「言及があること」。×は、「言及がないこと」。△は、「言及はあるものの結論として否定すること」を示す、というかたちで、各注釈書を比較した一覧表を作成した。結果的に、源氏物語全体の、3分の2程度の巻について、調査を進め、整理を行うことができた。具体的な調査の対象とした注釈書は以下の通りである。
1『日本古典全書』(朝日新聞社1946~)/2『日本古典文学大系』(岩波書店、1958~)/3『源氏物語評釈』(角川書店、1964~)/4『日本古典文学全集』(小学館、1970~)/5『新潮日本古典集成』(新潮社1976~)/6『完訳日本の古典』(小学館1983~)/7『新編日本古典文学全集』(小学館1994~)/8『源氏物語の鑑賞と基礎知識』(至文堂1998~)/9『新日本古典文学大系』(岩波書店1999~)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の核となる、戦後に出版された源氏物語の主要な注釈書が、史実と関わると思われる物語の個別の文脈に、どのような注釈を施しているかを比較整理する一覧表の作成を、当初の計画に従って、進めた。 本年度は、源氏物語のおおよその巻について、調査を終了することを目標に作業を進める計画を立てた。作業は計画に沿って進めることができたが、前年度と同様、資料の整理と分類に思いのほか手間取り、また前年度作成の一覧表についても、もう一度見直しを行いながら、本年度の調査を進めたため、当初の計画より、進捗状況において遅れた点が認められる。ただし、調査整理を進める中で得られた知見を元に、査読論文・研究論文を複数発表できたのは収穫であり、その点で「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
戦後に出版された源氏物語の代表的注釈書が、史実に関連して書かれていると思われる文脈について、どのような注を付しているかを比較整理した一覧表の作成に関しては、本課題着手前にパイロット版を作成して臨み、かつ本年度は、前年度までの反省をもとに研究を進めることができたが、「現在までの進捗状況」に記述したとおり、取り扱う書籍が広範に及ぶため、予想以上に手間がかかることが明らかにもなった面もある。ただし進め方と方法の有効性に関しては、十分に確認できたため、今後は、従来以上に、協力者の増員をはかるなどし、研究の十分な進展を図ることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
支出を行う予定だった書籍の購入を取りやめたため
|
次年度使用額の使用計画 |
書籍の購入費用に充当する予定である
|