今年度は、最終年度に当たり、前年度までの研究成果を受け継ぎ、おもに戦後に出版された源氏物語の主要な注釈書9種類が、物語中の史実を踏まえて書かれていると思われる文脈について、どのような注を付し、いかなる見解を示しているかを、網羅的に整理した「対照表」を完成させるとを目標として研究を進めた。その作業を通じて、従来の、史実と源氏物語の関連を考察する研究において、何がどこまで検討され、指摘されてきたかを、明確に示すことを目指した。 具体的には、源氏物語中の史実を踏まえて書かれていると思われる場面、文章などを網羅的にピックアップする作業をまず行なった。 続いて、「巻名」と問題になる文章を「見出し項目」として掲げ、『新編日本古典文学全集』の「巻数、頁数」を掲げた。以下、各注 釈書の比較を行うが、○は、その注釈書に「言及があること」。×は、「言及がないこと」。△は、「言及はあるものの結論として否 定すること」を示す、というかたちで、各注釈書を比較した一覧表を作成した。結果的に、源氏物語の、ほぼすべての巻について 、調査を進め、整理を行うことができた。具体的な調査の対象とした注釈書は以下の通りである。 1『日本古典全書』(朝日新聞社1946~)/2『日本古典文学大系』(岩波書店、1958~)/3『源氏物語評釈』(角川書店、1964~) /4『日本古典文学全集』(小学館、1970~)/5『新潮日本古典集成』(新潮社1976~)/6『完訳日本の古典』(小学館1983~)/7 『新編日本古典文学全集』(小学館1994~)/8『源氏物語の鑑賞と基礎知識』(至文堂1998~)/9『新日本古典文学大系』(岩波書 店1999~)
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