本研究は、『万葉集』の語彙を語誌的な考察を中心とし、新たな『万葉集辞典』の刊行を目指すところにあった。この三年間の研究成果として、①多田一臣『万葉集全解』のテキストデータ化を完了したこと。これを利用した共同討議の場を設け、その語彙の検討を進めたこと。②柿本人麻呂の語彙研究を始発とし、その作品世界の全貌を闡明にした『柿本人麻呂』(吉川弘文館)を刊行したこと。③同じく、高橋虫麻呂・山部赤人の語彙研究を基本とした『高橋虫麻呂・山部赤人』(笠間書院)を完成させたこと。④『万葉集』の語彙との比較から進めた『古事記』の歌謡研究を、『古事記』全体の評釈に結実させ、その完成をほぼ見たことが挙げられる。
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