6月、『和歌文学研究』第114号に、和歌文学会第122回関西例会(2016/12/3於京都女子大学)のシンポジウム「擬定家本の再検討」における報告「プソイド定家の始発─「汝月明らかなり」と鵜鷺系歌学書への道―」の要旨を掲載した。 公益財団法人冷泉家時雨亭文庫の機関誌「しくれてい」に「王朝の女流歌人―御文庫の典籍から」を連載した。時雨亭文庫所蔵の私家集(重要文化財)の綿密な調査をもとに、女流歌人の私家集を取り上げ、特に鎌倉時代に書写された、資経本・擬定家本・承空本の私家集群を扱いながら、専門研究者からひろく一般読者をも対象として、研究成果の一端を公開した。「しくれてい」140号(4/20)では歌人伊勢について、資経本私家集の「伊勢集」を紹介しながら、王朝女房歌人の嚆矢である伊勢が、歌人としても女房としても理想的な完成形をいちはやく示し、後世の女房たちに絶大な影響を与えたことを論じた。同141号(7/20)は資経本「中務集」を取り上げ、伊勢の娘中務について、二世ゆえの便益や不利益・プレッシャー、母子の葛藤など、後代の和泉式部と小式部内侍・紫式部と藤三位らの先蹤が早くも表れていることなどを指摘した。143号(1/20)は「権中納言実材卿母集」を扱った。白拍子の身でありながら太政大臣に愛され公卿の母となった舞女の生涯と、当時の白拍子の教養について先行研究に触れつつ『源氏物語』受容など具体的に述べた。2月には編集委員として関与した冷泉家時雨亭叢書の百巻完結記念シンポジウム「『和歌の家』が守り伝えるもの」(大阪中之島会館)にパネリストとして登壇、特に「擬定家本私家集」の発見、影印公刊の意義について報告し、討論を行った。 この他、中日新聞・東京新聞・北陸中日新聞の文化面に「王朝の歌人たち 雅の世界」を4月から10月まで、私家集などから和歌を引用しつつ毎週一回、26回にわたり連載した。
|