研究課題/領域番号 |
15K02232
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
重田 みち 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (40399069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 世阿弥 / 能楽論 / 足利将軍家 / 禅 / 儒学 / 中国の詩文 / 神道 / 連歌 |
研究実績の概要 |
世阿弥能楽論と足利将軍家周辺の文藝・学問・思想との関係について、本年度の課題(①神道思想との関連、②連歌論との関連)を順調に進め、学術研究会にて関連研究報告4回を行い、当初の予想を上回る収穫を得ることができ、その過程で新たな研究視角にも気づいた。その結果当初の目算以上の論文執筆を要することとなったため、次年度以降も引き続き行うこととし、本年度は複数の論文の構想及び①の成果としての論文「『風姿花伝』神儀篇著述の経緯と意図―「申楽」命名説に注目して―」約8割の執筆を行った。残りの執筆は28・29年度の研究の一部として行う。 また、次年度以降に計画していた課題及び本研究の発展的課題(③禅の思想との関連・④足利将軍家文化圏の文藝等との関連)についても、本年度課題と切り分けにくい面があるため同時並行して取り組んだ。③の成果として共著『禅からみた日本中世の文化と社会』の一章を執筆し、③④の成果としての論文「「夢幻能」概念の再考」を、学会発表を経て執筆した。 さらに、米国マサチューセッツ州立ブリッジウォーター大学での学術交流により、日本文化理解に有用な世阿弥や足利将軍家文化圏の研究の最新成果を国際的に弘め、関連研究の相互情報交換を行うための、今後の国際間の情報共有化に向けて一歩を進めた。 以上、本年度の課題と次年度以降予定していた課題を併せて進め、新たに本研究の一環として足利将軍家文化圏の美意識に関する考察をこれまで以上に深めることの重要性にも気づき、質・量ともに本年度の予定を大幅に超える研究結果を得ている。これらをとおして、世阿弥能楽論の、禅・中国古典・神道に関する思想・学問との関係、及び足利義持文化圏で好まれ後の日本の伝統的美意識の発端となった冷え・さびの美との関係について、従来の研究を大きく進展させる収穫を得ることができ、本研究第一年次として非常に有意義な成果を上げたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したとおり、当初本年度に予定していた課題に加え、次年度以降の一部の課題、及び新たな研究的視角を見出したことによる本研究の一環としての発展的課題を進めることができ、調査・考察の結果としての収穫、研究成果とも当初の予定を上回ったため。本年度の課題の一部が来年度繰越となったが、それはその課題を進める際に当初の予想を超える大きな収穫を得て、年度内に執筆可能な論文原稿の分量を超えたために必要となったものであり、本年度の課題の進捗が遅れたためではない。 研究成果として本年度に執筆投稿した論文の分量も、計400字×約170枚分相当に達し、当初の目算を超えており、人文系の研究成果の平均的分量に照らしても十分以上であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、27年度の調査・考察の収穫に基づく成果としての世阿弥能楽論に関する論文執筆を引き続き行う(神道説との関連に関する内容)。また、世阿弥能楽論について、中国古典の文体や中国の詩文との関連、及び、儒学(中国宋代以降の儒学を含む)との関連に関する調査・考察を行う。個別の文藝・学問・思想との関連について考察するだけでなく、足利将軍家文化圏の美意識と世阿弥能楽論との関係という視点からも考察を深める。次年度以降も同じ。研究推進にあたって、学会等研究発表のほか、研究代表者・連携研究者の中国への同時海外出張を行い、関連資料収集、当地の研究者との交流を行う。 29年度は、世阿弥能楽論について、28年度の課題を承けて、中国古典に特徴的な文体との関連、及び儒学との関連に関する論文執筆を行う。また27年度の課題を承けて世阿弥能楽論と連歌論との関係に関する論文執筆を行う。また、世阿弥能楽論と易学との関連に関する調査・考察を行う。研究推進にあたって、学会等研究発表のほか、研究代表者・連携研究者の台湾への同時海外出張を行い、関連資料収集、当地の研究者との交流を行う。 30年度は、世阿弥能楽論について、前年度に引き続き易学等との関連に関する論文執筆を行う。そのうえで、世阿弥能楽論とその背景としての足利将軍家文化圏との関連について、本研究の総括となる紙媒体の報告書を作成する。 以上が現時点でのひととおりの予定であるが、27年度に予想以上の収穫が得られ、今後本研究の規模が膨らんでいく可能性が出てきたため、上記課題のうち一部について、それを行うための時間を、規模が膨らんだ他の課題の遂行に変更して充てることも考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行う予定だった資料整理及びデータ入力にかかる費用を、次年度に必要な用途の費用に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に係る費用について、調査・研究打合せ等に係る国内旅費・外国旅費、資料収集に係る複写費等を補うために必要となったため。
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