従来指摘されていない日中韓三カ国の古代の文化交流の様相を解明し東アジアの文化交流への理解を豊かなものにするという明瞭な研究課題を具備する本研究にとって、2019年度も成果の大きい年度であった。 大韓民国中央大學校日本研究所主催「2019年度中央大學校日本研究所国際學術大會 An expression of sadness in East Asian culture」(2019年12月14日、於中央大學校)に招聘され「親と子の別れ―山上憶良の作品を中心に―」の題目にて研究発表、綜合討論に参加し国際学術交流を進展させた。具廷鎬氏(同大學校教授・同研究所所長)が総合司会を務めた同大会では李康範氏(同大學校教授)の研究発表等があった。李康範氏は韓国における中国文学の専門家である。「中国-韓国」の文化交流を考究する実際の現場に日本国内では立ち会い難い。国際学術大会にてこの現場に立ち会い研究成果を上げた意義は大きい。 古代幹線道と古墳の関連の究明の研究においても大きな成果を上げた。群馬県安中市教育委員会井上慎也氏の協力のもとおこなった「後閑3号墳」の臨地調査研究において、同古墳の「T字形石室」形状が、横穴式石室が幹線道「古代東山道」を通って中央から伝播した証である知見を得た。また、同古墳と一連の地域において古代東山道に面す「簗瀬二子塚古墳」の副葬品は韓国祭祀遺跡と関連する。幹線道「古代東山道」の要衝の地の古墳の意義の究明によって、次なる融合的研究を胚胎できた意義は極めて大きい。 廣川晶輝「山上憶良の天平元年七夕長歌作品について」(『上代文学』122号、1~14頁、2019年)を公表した。同論は「平成30年度上代文学会秋季大会シンポジウム山上憶良と漢籍・仏典」(2018年11月)にパネリストとして招聘された際の内容の論文化であり、山上憶良の研究者としての適性・能力具備の証左となっている。
|