研究実績の概要 |
今年度の成果としては、27th Annual Meeting of the Association of Japanese Literary Studies(カリフォルニア大学バークレー校で開催)において、”Inheriting Books: Overseas Bookstores, Distributors, and Their Networks"というタイトルで研究発表を行ったこと、また東アジアと同時代日本語文学フォーラム上海大会で「「満洲」における書物流通――満洲書籍配給株式会社以前、以後」というタイトルで研究報告を行った。 前者は、大阪屋号書店を軸にしながら、書物の流通と残留の問題を論じた。残留の問題を強調したのは、終戦時の書物の状況を調べる次の調査への橋渡しであると同時に、調査の現代的な意義や、記憶と物質と継承の問題を論じるためであった。後者は1920~30年代の満洲における書物流通を、満洲書籍配給株式会社以前の状況と以後の状況に分けて報告した。具体的には、日清戦争以後と満洲書籍商組合成立以後の書籍小売・流通史を略述し、1930年代における各書籍店のプロフィールと活動を紹介した上で、満洲の読書人たちの残した記事からこの地域の書物文化の断面を紹介した。さらに満洲書籍配給株式会社の成立と満洲国の廃滅までを、満配機関誌の論説を中心にまとめた。 調査としては、満洲地域における書物流通の分析に力を注ぎ、満洲書籍配給株式会社の機関誌の分析ほかを行った。また台湾、朝鮮、樺太、ハワイの状況についても、資料調査を行った。10月には中国上海において、内山書店をめぐる資料調査および現地踏査を行った。
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